日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

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前回、募集をしたのが2019年8月30日。
その際には、お手伝いの方もいいかな、と思っていたのですが、やっぱり違うな、と思い返し改めての職人募集。
以下、前回のものを踏まえつつ、書き直してみましたので、ご縁のある方がおられましたら。
一緒に生命を育む仕事をしてもらえたらと思います。

この5年程で大きく変ってことと言えば、お陰様でご注文を多くいただけるようになりました。このよう個人で職人を続けてゆけるとゆうことは、多くのご縁に恵まれてとても有り難いことだと、心から感じています。
また、仕事が多くなったことに伴い、線を引く、銅板を切る、鑢をかけるなど、下仕事が多くなりました。
下仕事が多くなったとゆうことは、これから鎚起銅器に触れ始める人にも仕事を依頼し収入の見込みができるとゆうこと。と共に、銅板に触れる経験を上げる好機が増えるとゆうことでもあります。
線を書いたり、鑢(やすり)を使ったり、錫をひいたり、この辺りの下仕事は、1ヶ月〜2ヶ月もすれば、できる仕事と思います。

そこで、職人になりたい人と募集をしたいと思います。
職人は、一緒に器を生み出す生命を預けるだけに、私の身内のように私の持てる技術や道具なども、できる限り提供してゆきたいと思っています。と共に、日々厳しい仕事をすることになります。
また、道具を大切にできるようになれば、鍵を預けて私が居ない時も、工房を管理してもらうこともあるでしょう。
そのあたりの感覚は掃除の仕方などから覚えられるものと思って居ます。

鎚起銅器とは、文字通り、一枚の銅板を金鎚で叩き起こし、器にする仕事。
職人修行には、時間もかかりますし、下仕事より先の仕事では、私が5分で出来ることに、2日も3日もかかってもできないこともあるでしょう。
そのひとつひとつの習得を、素直に丁寧にしてゆくことが大切と思います。

今の私の仕事の基本時間は5時30分過ぎに起床、身支度や掃除を済ませて、6時から事務仕事、8時00分頃に音を出せる様になったら製作に入る。12時頃に30分から1時間30分、その時の体調に合わせて昼休みをとって、19時30分頃まで製作。まま休憩有り。
仕事が混んでいるときは、際限なく仕事をするときもあります。徹夜のときもあったりしますし。打ち合わせのある時には、17時30分頃に仕事をやめて、身支度を整えて、夜の街に出る事も。
バーナーを多用したり、粉を使う仕事もあるため、エアコンが無いので、夏は暑く、冬は寒い工房環境です。

そんな、職人募集を、改めて始めたいと思います。
1、道具を大切にできる人
2、掃除を丁寧にしてくれる人
3、年齢25歳までの男子
4、鎚起銅器で、生計を立てたいと思っている人
5、大橋のうざったい迄の身近さを許容できる人。

以下、私のことなどを書き綴りました。
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私が鎚起銅器に出会ったのは、44年程前。父親が、燕市の老舗 玉川堂の工場長をしていて、家にも銅器が沢山あったように、おぼろげながらの記憶の中にもあります。そして、私も同じ職人として、22年目。10年玉川堂で修行し、12年前に独立をさせてもらいました。私の目指す銅器は、「想像力を育むうつわ」。なので、全てを手作業で成形してきます。金属が伸びながら縮む、一枚の板から、湯沸など器ができる様は、私自身、今でも不思議な感覚を持ちづけています。そして、その成形に対する自由度が高いのが、鎚起銅器の特徴でもあると思いますし、私も自由でありたいから独立した様に思います。
独立当初は、前職からの下請けをいただき、300万円程の年収で推移していました。数年して、下請けの仕事もなくなり、独自の営業を始めた頃には、150万円とゆう年収での推移。ちゃんと仕事として生活をできるようになったのは、5年ほど前、三方舎さんでの初個展をきっかけに、仕事が増え始めました。
3年前は、350万円、2年前は、400万円、前年は500万円と、収入も増やすことができています。
そこにゆくには、前職からの修行の下支えとがあったからこそ。
新しく修行を始める人には、その下支えの部分の補強をしてゆきたいと、強く願っています。
続けられれば、鎚起銅器の中でも手打ちの職人として、数少ない存在になれるかもしれません。
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他、普段の仕事の様子は、こちらのyoutubeをご覧いただけたら、映像としてご覧いただけます。
ご関心、ご興味ある方は、まずはお会いしてお話できたらと思っております。
職人は覚悟を持てる方、心よりお待ちしております。

2020年6月14日
大橋保隆 拝

新潟県上越市の塗師 飯塚直人さんとの共作「イイハシナオタカ」は、鎚起銅器と漆の組み合わせで、独特の表情がでます。
写真ではご覧いただけにくいところがありますが、飴色の表情が鎚目に映えて、様々な表情をみせてくれます。
新潟市内では、ヒメミズキ様、地酒の都家様にてお取り扱いいただております。
是非、手にとっていただき、肌触りも実感していただけたら幸いに思います。

現在、家に籠られているみなさんも多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
FBページには、鎚起銅器てづくり銅鍋愛好会があり、銅鍋料理を楽しまれている姿を拝見し、私も製作エネルギーともなっております。
昨年は、ギャラリースペースの改装と共に、キッチンも新しくなり、ここで銅器を体験していただけるようになっています。

そんな中、私も最近は様々な銅鍋料理を。
その一部をupします。

いろいろが落ち着いたこの秋には、また、銅鍋づくり体験全国ツアーを開催したいと思いますので、その際は、是非お声がけやご参加いただけたら幸いです。

銅鍋づくり体験の模様
https://tsuiki-oohashi.com/2019/07/11/3122/
銅鍋づくり体験について
https://tsuiki-oohashi.com/2019/01/13/2361/

新潟市東中通1番町ティオペペさんのお惣菜のあたため。
銅は熱が全体に包み込むようにあたたまるので、このようなお惣菜にもぴったりかと感じます。

先日、クッキングライフnukunukuさんで習ったペペロンチーノを、ふなくぼ農園さんの玄米麺で。

シンプルに、チャーハンも卵はふわふわで、お米はパラパラに。

小さい銅鍋を使い、大阪の薩摩の牛太さんからお取り寄せした、ハンバーグを。
銅鍋の効果か、ふっくらと焼けたように思います。

そして、牛太さんからのお肉を解凍する際にも、銅鍋は活躍してくれます。
銅の熱伝導率の効果でしょうか、ディップが出にくいため、私は、いつも銅鍋の上で解凍をしています。

お宅で楽しむ時間のお供として、銅鍋が活躍してくれること、嬉しく思います。
ご自身の手で生み出した銅鍋で、生活を楽しんでいただけるよう、今後とも各地に伺わせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。

先年改装し併設された、生活手仕事研究所にて、みそづくりをしました。
鎚起銅器の手仕事と共に、このような手仕事も生活の中に染み込んでくれることで暮らしが豊かになればと思っています。
これからは、そんな模様もこちらでお伝えしてゆきたいと思っております。

大豆は、新潟市秋葉区のshida farmさんの自然栽培の大豆を使い、前日に浸水す。shidaさんの大豆は甘さが際立つ大豆。

一晩水に浸けたら、銅板を叩く隣で朝から茹で始め。
このステンレスの寸胴も、知人の鍋屋さんから傷物をいただいたものです。
これがあれば、いざとゆう時の炊き出しや、茜染の煮出しなどもできる、優れものです。

仕事に合間に、時々様子をみながらコトコトと。
今回は、朝8時から14時ごろまで茹でこみました。

麹は、長岡米を地元の麹屋さんが仕込んでくれたもの。
塩は、長崎平戸の海水を天日と釜で炊き上げたものを用意。

盥と秤、ざる、ボウル、入れ物を用意して、準備万端。

まずは、大豆を手で潰します。
豆の形が無くなったら、麹と塩を入れて満遍なく混ぜ合わせます。
時々、硬さを見てあげて、硬いようなら煮汁を入れて良き具合に。

後は、空気が入らないように、樽によく押し込んで密封したら完成です。
3キロで30分ほどの作業。
麹菌と共に、家の微生物、仕込んでくれたみんなの微生物が、これからの発酵で活躍してくれます。
まさしくな手前みそは、それぞれの味わいがあり、一日一杯のみそ汁で身体が喜ぶことを感じます。


みそについての詳しいことは、手仕事仲間の冨貴工房 冨田貴史さんが小冊子にまとめてくれています。こちら、手にとって読み込んでいただくことで、みそと私たちのより良き関係を築くきっかけになると思います。
生活手仕事研究所でも取り扱いしておりますし、冨貴工房HPでもお取り扱いしておりますので、是非。

また、合間を見つけてこのような手仕事の時間を、お伝えしたいと思いますので、お付き合いいただけたら幸いです。

先日発売された、クロワッサン4月10日号に、新潟出身の料理家の坂田阿希子さんが、モノづくりの町を訪ねるとゆう企画の中で、私の工房にも立ち寄ってくださいました。

坂田さんとのご縁は、2018年の1月3日。
1月2日の里帰り中に新潟市のヒメミズキさんにお立ち寄りいただき、私の銅鍋に関心を持っていただき、お会いしたのが始まりでした。

坂田さんにはミルクパンなども生活の中でお使いいただき、その感想をお聞きし、改善点を考えたりと、学びを深めさせてもらっています。
そんな坂田さんと、改めての工房でのひとときはとても楽しい時間でした。
お話しする中で、また新しいアイディアも生まれてきたり。
今、坂田さんと銅器の新しい企画をあたためています。
世の中が落ち着いた頃には、発表できると思いますので、もうしばしお待ちください。

坂田さん、昨年の11月には、代官山のヒルサイドテラスに洋食やさんをOPENされました。
洋食 KUCHIBUEさん Instagram
先日の東京出張の際に、寄せていただきましたが、光のいっぱいに差し込むお店。出張先の東京で、ほっと一息。
ゆで卵入りのグラタンが、とっても優しく沁み入りました。
是非、ほっと一息。
東京の真ん中でついていただけたら幸いです。

今回のクロワッサンには、暮らしの道具決定版とゆうことで、燕三条のものづくりもたくさん掲載されています。
また、坂田さんの記事には、私がお世話になった修行先の玉川堂と共に掲載していただいております。
鎚起銅器の幅の広さ、奥行きの深さを感じていただけたら幸いです。

只今、出張中の銅鍋づくり体験 西日本ツアーも
後半の福岡2daysを今週末に控えるのみとなりました。
大阪での開催にご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
そして、福岡でお会いするみなさんも、どうぞ、よろしくお願いいたします。

また、オーダーをいただいている皆様、帰り次第、工房に籠もり通常運転の製作に入らせていただきますので、しばしお待ちください。
現在、オーダーをいただいている方々の分で、5月半ばまで予定が埋まっておりますが、オーダーをご検討いただいているみなさん、その先に向けて図案のやりとりなどを含め、ご相談をさせていただきながら進めさせていただきますので、ご依頼をお待ちしております。

鎚起銅器の特徴は、一枚の平らな銅板を叩いて形にしてゆくこと。
既製品でも、オーダー品でも価格はほぼ代わりがありません。お客様の生活に合わせた器づくりを目指しておりますので、お気軽にご相談ください。
最近、製作の器をupさせてもらいます。
また、Instagramでもupしておりますので、ご参考にしていただけたら幸いです。

ロゴ入りトレイ

ジャムボウル

ミルクパン15センチ

香筒

最近は、殊に海外からのお問い合わせが増え、フランス、オーストリア、台湾、香港など各地からmailをいただき、鎚起銅器をお伝えする機会が増えていることを、心より嬉しく思います。
そんな中、HPを製作してもらった、新潟市ツムジグラフィカ高橋トオルさんが更にHPを進化してくれました。

中程で、動画が観れるようになりました。
この動画は、8年前の夏に、新潟市秋葉区の三方舎さんにて、初めての個展を開催させてもらった際に、代表の今井正人さんがつくってくださったものです。
この動画のお陰で、沢山の方に鎚起銅器職人として知っていただき、独立後の基礎を固めることができました。

一枚の銅板を叩き起こし器にする鎚起銅器。
手元にある器全てに、器になった理由、そして、使われることで経年変化して行先があるものです。
この手仕事を通して、そんな器に対する想像力を育めたら幸いに思います。


改めて、この動画を通して、鎚起銅器の世界に触れていただけたら幸いです。
8年間、続けてこれた感謝を込めて。

先日、仕事始め前に研いだ金鎚を並べる棚が完成し、工房に搬入していただきました。
製作主は、新潟県出雲崎のOjn Handmad Hut ワダヨシヒトさん。
ワダさんには、前年夏の工房改装の際にも、キッチンの棚をつくっていただきました。
すっきりしたものから、可愛いものまで、幅広い製作をされるワダさん。
今回も前回と同じ硬めの材料で、しっかりと作っていただき、愛用の道具もすっきりと並ぶようになりました。
これで、道具を選ぶときも、すっと手が伸びるちょうど良さ。
環境を整えることを、今年はさらに進めてゆきたいと思っております。

鎚起銅器の仕上げに使う金鎚はピカピカに磨いたものを使用します。
この鏡面磨きが反転し器も鎚目が美しくなります。
すっきりと新年を始め、道具入れも整い。燕市の工房は良い始まりとなっております。

2020年

2020.01.02

新年、明けましておめでとうございます。
新潟県燕市の鎚起銅器職人大橋保隆
2020年も無事に始動することができました。
本年もご縁のあるみなさん、何卒、よろしくお願いいたします。

毎年、1月1日に書き初めをするマインドマップ。
恒例になってから6年ほど経つでしょうか。
頭の中に浮かんでくる言葉を連ねて、今、自分の考えていることを整理しつつ、新しい言葉のつながりの中から、自分の可能性を開いてゆく。といった作業です。

今年も、8時間ほど没頭し、書き上げる中で、やりたいことを発見することができました。職人としての器作りの他にも、作家としてのものづくりを、ひとつ始めてみようと思います。
職人としては、オーダーいただいたものを、よりお客様の生活に寄り添った形にできるように、技術を高め。
作家としては、自分から湧き出てきたものを、素直に形に留められるように。

また、昨年の工房改装から、真鍮を使った金具作りも進めています。
その辺りを今年は整理整頓してゆきたいと思っております。

銅鍋作り体験も、今年もまた各方面からお声がけいただいております。
周辺で開催の際には、是非ご参加いただき、ご自身で生み出す銅器の愛おしさを感じていただけたら幸いに思います。
ただいま、決まっているスケジュールです。

銅鍋づくり体験
三条銅鍋づくり 1月19日(日)
https://www.facebook.com/events/584553005683493/
2月8日土曜、9日日曜 前橋市
三条銅鍋づくり 2月16日(日)
https://www.facebook.com/events/609190859884193/
三条銅鍋づくり 3月8日(日)
https://www.facebook.com/events/807090306403097/
3月27日金曜、28日土曜 福岡県

鎚起銅器職人を基軸として、ものづくりの可能性を開き、想像力を育んでいただける器づくりに、本年も精進してゆきます。

神戸での銅鍋づくり体験にお声がけしてくれた、書家の華雪さんから、翌日に奈良へ墨づくりの見学と、握り墨づくりに行くとのことで、ご一緒させてもらいました。
穏やかな冬の晴れ間に、ピクニック気分での奈良行き。
他の職人さんの仕事を見せてもらう、とても良い機会となりました。

向かった先は、奈良市内の墨運堂さん。大きな資料館と製作現場が一緒になり、製作現場も見学できるような施設です。

その日は、職歴17年の職人さんが居られ、実際に墨を製作されていました。
墨とゆうと、硬いイメージですが型から取り出した墨はまだ柔らかく、そこから水分が抜けることで、徐々に硬くなってゆくとのこと。
表面に施されている、このような木型も段々とつくれる職人さんが少なくなり、模様を彫る工程も今勉強中とのこと。
この辺りは、どこの伝統産業でも聞かれる話で、鎚起銅器の世界でも、道具をつくれる職人さんが、私の経験年数の中でも、確実に減っています。

墨の製作工程を見学させてもらい、この材料のほとんどは、私たちが彫金で使う松ヤニとゆう道具と同じだと知りました。私たちの使う松ヤニは油を使い、もっとドロッとしていますが松ヤニとすすと油を混ぜたもの。
温めると柔らかくなり、冷めると硬くなる性質があり、表札などの製作に使う道具です。

今回知って、そうかと思ったことの大きなひとつ。墨は竜脳で香りづけをしているとのことで、この香りづけをしないと、とても嗅げるような匂いではないとゆうこと。私の好きな墨の香りは、ここから来ていたのかと。

油を燃やし煤をとることが、とても大切な作業。煤の具合で、色も変わり、品質に関わる。
また膠を溶かす作業も根気のいる作業となっており、ゆっくりじっくりと溶かしてゆくとのこと。
その膠と煤や竜脳などを混ぜる作業も、模型のように、昔は人手で攪拌していたようですが、今は機会化が進み、だいぶ楽になったとおしゃっていました。
そこも、伝統工芸の共通点で、時代とともに作業も変化してゆきます。

墨から硯、書の説明と1時間ほどのお話を伺った後に、握り墨の製作に。

先ほどの職人さんが練ってくれたものを、手のひらに乗せてもらい、ぎゅっと握る。握り方でそれぞれの表情が出て、面白い体験でした。袋の中に入れて水分を飛ばせば、3ヶ月ほどで使えるようになるとのこと。

今回の見学を通して、職種は違えど、伝統産業の現場は共通する部分が多いなとゆうことと、これからの職人の育成について考える機会となりました。
そして、墨と硯、水の関係を知れたことで、書の作品を観る際の補助線をいただきました。
お声がけいただいた華雪さん、心よりありがとうございました。