日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

カテゴリー〈 製作 〉

鎚起銅猫

2024.01.14

普段は、鎚起銅器として、一枚の銅板を叩き上げ、器として商品を作っているわけですが、この度声があり、新潟市のデザイナー石川経治さんの35周年記念の個展に合わせて、石川さんの作品をオマージュとして、立体の猫をつくりました。
その道程をお伝えします。

始まりはやはり、板から。今回は尺2寸、45センチの銅板を使用。

いつものように、端から打ち起こします。

ここまでは、普段の鎚起銅器づくりと同じで、底を基本として打ち上げてゆきます。
今回の本題は、ここから。
徐々に耳を打ち出してゆきます。この辺りは、3本足香炉をつくる際の足を作る作業と同じ技術。

ある程度の耳の位置が決まってきたら、身体の造作に。背中の部分を出しながら、顔の位置も決めてゆきます。

鎚起銅器では、叩くと硬くなり、「焼き鈍し」といい、バーナーで火にかけると柔らかくなります。その繰り返しで形にしてゆく。同じように、やわらかくしては、身体を作りながら耳も整えてゆく。
1度焼き鈍したら、出来るだけの作業を進めておく。バーナーのガスをできるだけ使わないように、資源を大切にする父からの教えのひとつです。

顔の造作は、鎚起銅器では、口打ち出し湯沸の技術があり。口も一体につくるその湯沸製作の技術を使いながら鼻と口周辺をまとめてゆく。

全体像が見えてきたら、体の部分の凸凹を整える。これは「均し」といい、製作途中でできた銅板の厚みの違いを均一にしてゆく作業。

表面に錫を塗り、焼き付け。
新聞紙に近い色にしたら、最後の均し。全体を光った金鎚で叩いた後、顔の部分をかっちりと作るために、内側に松脂を入れ、「鏨」とゆう鉄の棒を何種類も使い決めてゆきます。
松脂を出して、綺麗に磨き仕上げたら完成。

普段は商品とは違い、自分の中に在る作家としての機運を感じられる時間となりました。
是非、この作品で出会ったいただき、内側も観てみてください。
手仕事の軌跡が、感じられるかと思います。
個展詳細は、以下に。
いつも美味しいワインと、このような機会を与えてくださる石川さんに感謝しつつ。また、鎚起銅器職人として励みます。

ISHIKAWA Design 35th memorial
「ねこだまし」展 にゃんくらにゃるさぁ
tsunesun original illustration
会期/1月13日(土)〜28(日)
時間/14時〜(日曜は11時から19時)
場合によって変わる事もありますが、都度Facebook、instaに掲載いたします
会場/ピノとグリ〜古町通4番町565番地

群馬県前橋市のAVANTI様にご依頼を受け、オリジナルのピッチャーをつくらせていただいております。
その製作行程の一部を、お伝えします。
まずは、いつものように長方形の銅板から、丸い板を切り出すところから。
円周から立ち上げ、徐々に底の大きさを決め。あとはひたすらに立ち上げてゆきます。
叩けば硬くなる銅板を、熱して柔くし。その繰り返し、繰り返し。

ほぼ形が完成したら、錫を焼き付けて表面の色を変えます。

真鍮の板を切り出し、取っ手をつくり、本体と取り付け。

今回は、底にご依頼主のお名前を彫金させていただきました。

仕上げたら完成となります。
コーヒーの温め直しや、濃厚なミルクティーを淹れるのにとても良い。とご好評をいただいております。
私も、日々の楽しみとして、ピッチャーを使いこなしてみたいと思いました。

木札製作

2022.11.08

久しぶりに、木札製作をすることになりました。
この一文字を彫り込む木札は、独立当初、各方面から依頼していただき、彫金に於ける鏨を使う機会をいただきました。
なかなか使う機会のない彫金とゆう技術。
25周年の節目に、初心に帰り、彫金も研鑽してゆきます。
独特な文字で彫り込む、この木札。
左から





となっております。

こちらの木札を、送料税込 5,000円で再販をします。
お好きな文字を一文字、彫らせていただきますので、ご希望がありましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

使い込むほどに文字が浮き出てきます。
銅の温もりを身近に感じていただけたら幸いです。

本日2022年9月20日。
夕刻5時30分にタイムカードを押したら、鎚起銅器職人の道に入り丸25年2007年に独立して15年を経たことになります。
振り返ってみれば、崇高な志があったわけではなく、父が勤めている親戚の鎚起銅器の会社に転がり込み。ただひたすらに目の前のことを一所懸命に過ごしていたら、今ここに辿り着いた。そんな心持ちです。
でも、そんな道程で沢山の方々と出会い。そのご縁の中で見つけることができた人生の宝物は、今確かにこの手の中に在ると感じています。

4年前より鎚起銅器に関する本を近所のコーヒー屋と企画していました。燕三条で毎年10月に開催されていた工場の祭典に際して、彼が企画し私が銅器製作をしていた数年の道程を1冊の本にまとめようとゆう事がきっかけです。
当初はもっと簡素なものとなるつもりでしたが。どうせならこんな試みもどうだろうか?この方にも文章をお願いしてみたい。と積み上げてけきたら
「俗物」このような本が出来上がりました。
https://tsuiki-oohashi.com/book
10月7日から始まる2022年工場の祭典より発売します。

特に予算があったわけではなく。自分たちのやりたいことを詰め込んで、印刷屋さんからの見積もりをもらった際。「これは墓石を買うようなもんだな。」と思いました。
私が資金は出しましたが、自分の意思でこの本ができた。とゆうよりも、製作委員のみんなでこの本とゆう人格を一緒に考え、一所懸命に積み上げてきたらここに辿り着いた。といった感触です。
この本特に私が文章を書いているわけではありません。依頼させてもらった執筆者のみなさんに鎚起銅器に触れていただきそれにまつわる文章を寄せていただきました。

日々、職人としては独り、一所懸命に積み上げてきましたが、この本は企画を一緒に始めたツバメコーヒー 田中辰幸。デザインを担当してくれたツムジグラフィカ 高橋トオル。私たちの手綱を引っ張ってくれた 編集 佐藤裕美。製作委員会 4人の力を合わせ一所懸命に積み上げてきました。
この本をひとつの節目としてまた職人として26年目も一所懸命に積み上げてゆきます。

このメンバーで形にした本「俗物」是非是非一人でも多くの方に手に取っていただきたいと思っています。
何故「俗物」とゆうタイトルなのか?は、田中さんの文章をお読みください。
https://note.com/zokubutsu220920/

詳細やお申し込みなどにつきましては、HPの特設ページをご覧いただけたら幸いです。
今日から予約を開始し、10月6日までは事前予約にて、送料無料で俗物グッズもプレゼントさせていただきます。
【事前予約限定・特典タオル付】『俗物』鎚目銅板付き特装版セット(送料込)¥16,500 税込
【事前予約限定・特典バッジ付】『俗物』普及版セット(送料込)¥5,500 税込

私とmailのやりとりをしながら予約をしてくださる方は↓より
「俗物」HP
https://tsuiki-oohashi.com/book
現代的にポチッと買ってくださる方は↓より
俗物ストアーズ
https://zokubutsu220920.stores.jp/

このHPページやnoteでは徐々にこの本に纏わる動画や文章をupしてゆきますのでそれも楽しんでいただけたら幸いです。

兎にも角にも、鎚起銅器職人大橋保隆26年目。
明日からも一所懸命です。
またご縁のある皆様のご指導ご鞭撻の程何卒よろしくお願い致します。
2022年9月20日
大橋保隆 拝


執筆者:
 大倉 宏(美術評論家)
 華雪(書家)
 木村 衣有子(文筆家)
 鞍田 崇(哲学者
 高木 崇雄(「工藝風向」店主)
 田中 辰幸(ツバメコーヒー店主)
 富井 貴志(木工家)
 三谷 龍二(木工家)
鼎談:
 山田立(玉川堂 番頭)
 佐藤大介(あららぎ 店主)
印刷: 藤原印刷株式会社
発行: 「俗物」製作委員会

以前は、湯沸などによく使われていた「出し摘み」の製作をさせていただいたので、その工程を記しておきます。
よく使われていた、とゆうだけに。今はつくる職人さんもほぼいないでしょう。
今は、木製のものの方が使いやすいですし、実用的です。また私も普段の製作では銅と比べて熱伝導率が小さい、真鍮の摘みを使っています。
今回は、「湯呑みの蓋のイメージで製作してほしい」とゆう依頼があり、製作させてもらいました。

製作は、至ってシンプルですが、徐々に肉を中心に集めるとゆう作業を繰り返します。
1ミリの材料を使いましたが、この厚みの中でも肉をあっちに集めたり、こっちに寄せたり。とゆうことを繰り返しています。

徐々に中心に肉を集め、高さを出します。
高さを出したら、摘みの特徴であるくびれを付ける。

最後に全体を整えたら完成。
私も十数年ぶりに、この作業を行いましたが、やはり身体が覚えているものですね。
そして、自分の製作物に活かしてみたい技術だと感じました。また、様々に試してみたいと思います。

湯沸の弦は、強度を持たせるため、また熱さを逃すために、中空構造になっています。
その製作も、ゲージを使ってのまた切り出しから。

鉄の棒と溝を使い、ある程度のきっかけをつくり、あとは木槌で丸め、形をつくってゆきます。

繋ぎ目を銀ロウで溶接し、錫を溶かして流し込みます。錫を流し込むことで、安定した成形ができるようになります。

上がり盤とゆう欅の盤にちょうど良い穴が空いており、その穴を使いながら丸みをとる。

あとは、本体と擦り合わせをし、穴を開けたら取り付け可能。
この本体の接合部とのバネの聞かせ方も、職人の個性が出ます。長年使ってもヘタレないような程よい取り付け具合で、仕上げに。

籐の弦を巻いて完成となります。

鎚起銅器といえば、この色。と言われるくらいに代表的な色として広まっている金古色。なんと表現していいのか、光の当たり加減で青色にも緑色にも見える、所謂ところの玉虫色。
この色を出すためには下地づくりが大切で、錫の焼き加減が重要になってきます。
私は、表札にしか金古色を使っていませんが、このような下処理や道具の整備を今年は行ってゆきたいと思い、ひとつひとつ整理してゆきます。
金古色の見本は、このような色合いです。

金古色下処理。
まずは、材料を切り出し、錫を塗る。
この時点では、普段作っている盆などの月色表面処理と同じ工程。

この後が重要となり、月色の場合はバーナーのみで銅板に錫を焼き付けますが、金古色の場合は炭の上で焼き付けます。
私の考えでは、この炭素が重要と考えます。
大きな銅器屋さんでは、コークス炉があり炭ではなくコークスで焼き付けます。
高温が必要とゆう面もありますが、刀鍛冶がワラ灰を使うと聞きますが、そのような原子同士が溶着する際に必要なものなのかもしれません。

こちらの四角い七輪は、能登切り出し七輪。
良き道具は、気持ちよく仕事をさせてくれます。
詳しくは、こちらの過去blogをご覧ください。
「奥能登旅 七輪編」
https://tsuiki-oohashi.com/2020/09/12/4135/

焼き付けた後の図。

この時点でも、大体の成功具合はわかりますが、やはり綺麗にしてみるまでは、確信をもてません。
酸化膜を落とし、綺麗に磨いたらすっきり。これで表札の製作に実製作にはいれます。
表札製作の部分につきましては、こちらのblogにてご覧ください。
https://tsuiki-oohashi.com/2019/01/06/2347/

今年は腰を落ち着けて、様々なことを試し、このような探求を進めてゆきます。

鎚起銅器の仕上げにおいて、漆をかけることがあります。
何故、漆をかけるのか。
色艶に深みを増し、堅牢な色となります。

仕上げの内容としては、普段と同じように、器が完成したら綺麗に磨き、硫化カリュウムの水溶液の中に漬け込むことによって黒くします。

その後、艶を出すように磨き込み。
緑青硫酸銅の水溶液を沸かし、2分ほど銅器を煮込みます。

よく乾かし、ゆるく熱しながら漆を伸ばし塗ってゆきます。
全体的に漆が行き渡ったら、ムラの無いように全て拭き取り、その後、釜を被せて最弱の弱火で1時間。

最後にイボタ蝋とゆう純粋な蝋を塗ることで、艶がまします。
この辺りは、普段の銅器と同じ最終工程。
漆を塗ることで、深い艶感がでてきます。
今回は水盆とゆうことで、水滴などの後が出にくいように、このように漆をかける作業を入れました。
その使い勝手によって、鎚起銅器製作工程も幅をもって進めてゆきますので、ご相談ください。

新潟市秋葉区の三方舎さんよりご依頼いただき、ギャラリーの看板製作をさせていただきました。
今回は、その製作工程をお伝えいたします。
先ずは、打ち合わせし大きさを決め原稿をいただきます。
今回の看板はパソコンデータでいただきましたが、特に決まった書式があるわけではなく、紙媒体に手書きでいただいても対応することは可能です。
三方舎さんからいただいた原稿を反転し、柔らかくした銅板にロゴを写します。この度の看板は40センチ×50センチ。

銅の看板づくりや表札は、先ず裏側から文字を打ち出し、その後、表側から表面を整える工程。この黒い物体は松脂といい、油と砥の粉と煤が混ざったもので、熱すると柔らかくなり冷えると硬くなる性質があり、コンロで何度も温めながら、徐々に文字を打ち込んでゆくとゆう作業が続きます。

こちらの鏨とゆう道具も、鉄の棒を加工し50本以上の種類を使い分けます。

おたふくと言われるハンマーも数十グラムの重さの違いで、削ったり穴を開けたりと自ら製作したもの。

裏面完成。

表面に付いた松脂を綺麗に落としてから、地模様を叩き入れ、今度は表側から整えるように文字の表面を鏨で整える。
1センチほど折り込み立体にし、四隅を錫で固めたら形は完成。仕上げに入ります。

形が完成した看板を綺麗に磨き込んだら、硫化カリウムをお湯に溶かしたものに漬け込み真っ黒にし。
文字部分を磨き出し。

緑青硫酸銅の混合液で1分から2分煮混むことで玉虫色に発色します。

こちらで看板が完成。今回は、外壁に設置されるとのことなので、段々と緑青が吹き、徐々に緑色が濃くなってゆくかと思います。度々訪れられる場所だけに、三方舎さんでどんな風に育てゆくのか、ご覧いただけたら幸いです。

久々に動画を撮ってYouTubeにupしてみました。
鎚起銅器に於ける「均し」作業です。

銅鍋づくり体験では、「皆さんに入れてもらう鎚目は模様のようなものなので
入れても入れなくても良いです。」とお伝えしていますが、普段の製作ではほぼ金鎚で製作するので、金鎚の跡は必然的についてしまうものです。

それを最後に小さい金鎚で叩き整える作業を「均し」と言います。読んで時の如くといいますか、成形段階では大きな金鎚でガンガンと叩いて進めるので1ミリほどの中でも厚みに差がでます。その差を叩き整えるので「均し」とゆう作業です。

以前の彫金がメインの鎚起銅器製作の際には、この鎚目を全部削り落とし、彫金模様を施していました。

ですので、皆さんにお伝えしている銅鍋づくり体験での鎚目入れは、やっぱり模様入れとゆう表現だなと振り返る午後です。
金鎚が平らに落とせるようになるまでは、錫の塊を叩いて平らにしては鉄鍋で塊に戻し、また叩くとゆうことを仕事終わりに1週間続けました。
入社して最初に、金鎚との関係性を覚える修行の始まりです。