日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

カテゴリー〈 製作 〉

本体に続き、小道具と言われる、口、耳(本体と取っ手を繋ぐ部)、蓋、中合(本体で蓋を支える部)、取っ手の製作。

先ずは、耳から。
今回は、3ミリ厚の銅板を切り出し、削り込み形をつくります。
一般的には図右側のように、折り曲げて本体との接合部分を多めに取りますが、今回は立てるような取り付け方法を考えました。
ひたすらに削り、本体と擦り合わせをしながら形を整えます。

そして、今回の特徴的な部分として、口が今までとは大きく違うものとなりました。
一般的な湯沸の場合、多くの湯量を出すため、注ぎ口も大きくなりますが、今回は細く淹れるための形を考案させてもらいました。
湯沸は湯切れや湯量の調整をどうするのかが、肝と考えます。ご依頼いただいたイメージに近づけるように。

ここでも、ゲージをつくることから始まります。
そして、焼き鈍しをした銅板から切り出し、金床の上で木槌を使い丸めてゆき、背中を溶接で合わせます。

合わせた後、これらの道具を使い整形。
ここでも焼き鈍しを行い、3回ほど柔らかくしては叩きを繰り返します。

各部のポイントを押さえながら、湯の流れをイメージします。
袋に溜まり、しなりと背中を通り唇から湯が出て、どう戻るのか。
出ることと共に、戻り方により湯の切れ具合が決まってきます。

口、耳の部分を本体に接合。
口を本体に擦り合わせ、穴を開けヤスリで削り嵌め込みます。
金属ですので、擦り合わせもヤスリで削り、様子をみては削りを繰り返します。
嵌め込んだら、錫で目止めをし、水漏れがないかを確認。

続いて、蓋と中合の製作。
二つの板を同時につくり始めます。
中合は本体の口径に合わせつつ、蓋は中合に合わせつつ。
形が決まったら、中合は中心部分を切り落とし、異物が混入した場合にかき出せるように、欠けを切り。本体に合わせ錫で小口を溶接し、ヤスリで整えて。

全体の形が決まったら
最後は、取っ手の製作。
銅板を丸めてつくる取っ手が一般的で、今回も一度試作をしてみたのですが、バランスが合わずに、真鍮の平板に変更させていただきました。

真鍮は、銅と亜鉛の合金で、銅とは親和性があります。
銅と比べ、硬さがあり、熱伝導率も低いため、ミルクパンやフライパンなどの取っ手にも使用します。
取っ手の特徴は、この耳との接合部。図のように穴に銅鋲を通して、叩いて締めるわけですが、この時、取っ手の接合部の曲がりによってバネが効き。バネが効くことで、取っ手の可動領域が決まって来ます。
このバネの効き方の調整にも、それぞれの職人の個性がでるところ。

取っ手が完成したら、本体部分、蓋をよく磨き仕上げたら完成。
取っ手には、籐の蔓を巻いて、本体に取り付け。
蓋には、いただいた木のつまみを取り付けます。鎚起銅器の弱点であるつまみを木で補強していただくことで、一層使いやすい湯沸となりました。

今回は、2つの湯沸を同時並行で製作し、ひとつを手元に。
画像は、手元にあるもので。つまみ部分は試作していただいた小さい方を使用しているので、お届けしたものと少し雰囲気は違います。
こちらは、ある企画のために製作されたもの。その企画は秋頃に発表予定です。

今回、デザインをいただいた中で、この湯沸を製作させていただき、私がいつか試してみたいとゆうことを、各所で詰め込むことができました。
一番大きな特徴は、やはり注ぎ口。
工房でほっと一息つく際に淹れるコーヒーの楽しみの質が、この注ぎ口のお陰で一層深くなりました。
生活を楽しむ道具として、このような形に出会わせていただいたことに、感謝しつつ。更なるご依頼にお応えできるように、腕を磨きたいと思います。

今回は、木工作家の三谷龍二さんからデザインをいただき、台湾茶やコーヒーなどにお使い良いような湯沸のご依頼をいただきました。
寸法をいただいての製作は、またひとつ気の入りが違うものです。
納得ゆくものになるまでの道程。
長くなりますが、2回に分けて、ご一緒いただけたら幸いです。

先ずは、いただいたデザインを前に、細部の確認から始まります。
お使いいただく状況や、気になる点など、いただいたデザインと私の経験を擦り合わせさせていただき、形をつめてゆきます。

そして徐に始まる、いつもの一枚の板から。
湯沸本体部の形を作り始めます。
銅は叩くと硬くなり、バーナーで火にかけると柔らかくなるとゆう性質があります。この焼き鈍しの作業と、叩く作業の繰り返し。

そして、今回重要なのは、ゲージを切ること。
外側の形をみるためのものと、内側の形をみるためのものを二つ。
現段階では、この内側のゲージが重要となります。
時々、合わせて膨らみを確認します。

ここで、上方を部分を縮める工程を動画で。
口の大きさを縮めることでできてくるシワ、これを重ねないように叩くことで、口の大きさは縮まってゆきます。
金属とゆうと固いイメージですが、この辺りは、粘土と同じような素質で形は変わります。

重要なのは、首の立ち上がりの位置と長さ。
首を決めることで、本体の形はいくらでも調整ができます。

ここでも重要になってくるのは、外側のゲージ。このゲージに合わせて形を見てゆき、デザイン画と目視のバランスをみつつ、外側に錫を焼き付けて銀色にし、最後の仕上げの叩きをします。
これで、本体は完成となります。

次回の小道具づくりへと続きます。

先年改装し併設された、生活手仕事研究所にて、みそづくりをしました。
鎚起銅器の手仕事と共に、このような手仕事も生活の中に染み込んでくれることで暮らしが豊かになればと思っています。
これからは、そんな模様もこちらでお伝えしてゆきたいと思っております。

大豆は、新潟市秋葉区のshida farmさんの自然栽培の大豆を使い、前日に浸水す。shidaさんの大豆は甘さが際立つ大豆。

一晩水に浸けたら、銅板を叩く隣で朝から茹で始め。
このステンレスの寸胴も、知人の鍋屋さんから傷物をいただいたものです。
これがあれば、いざとゆう時の炊き出しや、茜染の煮出しなどもできる、優れものです。

仕事に合間に、時々様子をみながらコトコトと。
今回は、朝8時から14時ごろまで茹でこみました。

麹は、長岡米を地元の麹屋さんが仕込んでくれたもの。
塩は、長崎平戸の海水を天日と釜で炊き上げたものを用意。

盥と秤、ざる、ボウル、入れ物を用意して、準備万端。

まずは、大豆を手で潰します。
豆の形が無くなったら、麹と塩を入れて満遍なく混ぜ合わせます。
時々、硬さを見てあげて、硬いようなら煮汁を入れて良き具合に。

後は、空気が入らないように、樽によく押し込んで密封したら完成です。
3キロで30分ほどの作業。
麹菌と共に、家の微生物、仕込んでくれたみんなの微生物が、これからの発酵で活躍してくれます。
まさしくな手前みそは、それぞれの味わいがあり、一日一杯のみそ汁で身体が喜ぶことを感じます。


みそについての詳しいことは、手仕事仲間の冨貴工房 冨田貴史さんが小冊子にまとめてくれています。こちら、手にとって読み込んでいただくことで、みそと私たちのより良き関係を築くきっかけになると思います。
生活手仕事研究所でも取り扱いしておりますし、冨貴工房HPでもお取り扱いしておりますので、是非。

また、合間を見つけてこのような手仕事の時間を、お伝えしたいと思いますので、お付き合いいただけたら幸いです。