日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

今回は、木工作家の三谷龍二さんからデザインをいただき、台湾茶やコーヒーなどにお使い良いような湯沸のご依頼をいただきました。
寸法をいただいての製作は、またひとつ気の入りが違うものです。
納得ゆくものになるまでの道程。
長くなりますが、2回に分けて、ご一緒いただけたら幸いです。

先ずは、いただいたデザインを前に、細部の確認から始まります。
お使いいただく状況や、気になる点など、いただいたデザインと私の経験を擦り合わせさせていただき、形をつめてゆきます。

そして徐に始まる、いつもの一枚の板から。
湯沸本体部の形を作り始めます。
銅は叩くと硬くなり、バーナーで火にかけると柔らかくなるとゆう性質があります。この焼き鈍しの作業と、叩く作業の繰り返し。

そして、今回重要なのは、ゲージを切ること。
外側の形をみるためのものと、内側の形をみるためのものを二つ。
現段階では、この内側のゲージが重要となります。
時々、合わせて膨らみを確認します。

ここで、上方を部分を縮める工程を動画で。
口の大きさを縮めることでできてくるシワ、これを重ねないように叩くことで、口の大きさは縮まってゆきます。
金属とゆうと固いイメージですが、この辺りは、粘土と同じような素質で形は変わります。

重要なのは、首の立ち上がりの位置と長さ。
首を決めることで、本体の形はいくらでも調整ができます。

ここでも重要になってくるのは、外側のゲージ。このゲージに合わせて形を見てゆき、デザイン画と目視のバランスをみつつ、外側に錫を焼き付けて銀色にし、最後の仕上げの叩きをします。
これで、本体は完成となります。

次回の小道具づくりへと続きます。

先年改装し併設された、生活手仕事研究所にて、みそづくりをしました。
鎚起銅器の手仕事と共に、このような手仕事も生活の中に染み込んでくれることで暮らしが豊かになればと思っています。
これからは、そんな模様もこちらでお伝えしてゆきたいと思っております。

大豆は、新潟市秋葉区のshida farmさんの自然栽培の大豆を使い、前日に浸水す。shidaさんの大豆は甘さが際立つ大豆。

一晩水に浸けたら、銅板を叩く隣で朝から茹で始め。
このステンレスの寸胴も、知人の鍋屋さんから傷物をいただいたものです。
これがあれば、いざとゆう時の炊き出しや、茜染の煮出しなどもできる、優れものです。

仕事に合間に、時々様子をみながらコトコトと。
今回は、朝8時から14時ごろまで茹でこみました。

麹は、長岡米を地元の麹屋さんが仕込んでくれたもの。
塩は、長崎平戸の海水を天日と釜で炊き上げたものを用意。

盥と秤、ざる、ボウル、入れ物を用意して、準備万端。

まずは、大豆を手で潰します。
豆の形が無くなったら、麹と塩を入れて満遍なく混ぜ合わせます。
時々、硬さを見てあげて、硬いようなら煮汁を入れて良き具合に。

後は、空気が入らないように、樽によく押し込んで密封したら完成です。
3キロで30分ほどの作業。
麹菌と共に、家の微生物、仕込んでくれたみんなの微生物が、これからの発酵で活躍してくれます。
まさしくな手前みそは、それぞれの味わいがあり、一日一杯のみそ汁で身体が喜ぶことを感じます。


みそについての詳しいことは、手仕事仲間の冨貴工房 冨田貴史さんが小冊子にまとめてくれています。こちら、手にとって読み込んでいただくことで、みそと私たちのより良き関係を築くきっかけになると思います。
生活手仕事研究所でも取り扱いしておりますし、冨貴工房HPでもお取り扱いしておりますので、是非。

また、合間を見つけてこのような手仕事の時間を、お伝えしたいと思いますので、お付き合いいただけたら幸いです。

先日発売された、クロワッサン4月10日号に、新潟出身の料理家の坂田阿希子さんが、モノづくりの町を訪ねるとゆう企画の中で、私の工房にも立ち寄ってくださいました。

坂田さんとのご縁は、2018年の1月3日。
1月2日の里帰り中に新潟市のヒメミズキさんにお立ち寄りいただき、私の銅鍋に関心を持っていただき、お会いしたのが始まりでした。

坂田さんにはミルクパンなども生活の中でお使いいただき、その感想をお聞きし、改善点を考えたりと、学びを深めさせてもらっています。
そんな坂田さんと、改めての工房でのひとときはとても楽しい時間でした。
お話しする中で、また新しいアイディアも生まれてきたり。
今、坂田さんと銅器の新しい企画をあたためています。
世の中が落ち着いた頃には、発表できると思いますので、もうしばしお待ちください。

坂田さん、昨年の11月には、代官山のヒルサイドテラスに洋食やさんをOPENされました。
洋食 KUCHIBUEさん Instagram
先日の東京出張の際に、寄せていただきましたが、光のいっぱいに差し込むお店。出張先の東京で、ほっと一息。
ゆで卵入りのグラタンが、とっても優しく沁み入りました。
是非、ほっと一息。
東京の真ん中でついていただけたら幸いです。

今回のクロワッサンには、暮らしの道具決定版とゆうことで、燕三条のものづくりもたくさん掲載されています。
また、坂田さんの記事には、私がお世話になった修行先の玉川堂と共に掲載していただいております。
鎚起銅器の幅の広さ、奥行きの深さを感じていただけたら幸いです。

只今、出張中の銅鍋づくり体験 西日本ツアーも
後半の福岡2daysを今週末に控えるのみとなりました。
大阪での開催にご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
そして、福岡でお会いするみなさんも、どうぞ、よろしくお願いいたします。

また、オーダーをいただいている皆様、帰り次第、工房に籠もり通常運転の製作に入らせていただきますので、しばしお待ちください。
現在、オーダーをいただいている方々の分で、5月半ばまで予定が埋まっておりますが、オーダーをご検討いただいているみなさん、その先に向けて図案のやりとりなどを含め、ご相談をさせていただきながら進めさせていただきますので、ご依頼をお待ちしております。

鎚起銅器の特徴は、一枚の平らな銅板を叩いて形にしてゆくこと。
既製品でも、オーダー品でも価格はほぼ代わりがありません。お客様の生活に合わせた器づくりを目指しておりますので、お気軽にご相談ください。
最近、製作の器をupさせてもらいます。
また、Instagramでもupしておりますので、ご参考にしていただけたら幸いです。

ロゴ入りトレイ

ジャムボウル

ミルクパン15センチ

香筒

一枚の板を叩き起こし、器にしてゆく鎚起銅器に於いて、お盆など、サイズは大きくても立ち上がりが少ない器は、手間はかかからず。口の大きさが小さくなるほど、背の高さがでるほどに、学び深き物になると今回の製作で感じさせてもらいました。

3枚の銅鍋を組み合わせて形にする香筒。
まずは、本体部分の製作から。
過去の動画も含めて、お伝えします。

図案から材料の大きさを計算し、大きな四角い板から金切鋏で切り出します。
そして、木台で立ち上げ、口の大きさを絞り始め。
口の大きさを絞ることにより、器の高さが出てきます。
今回の材料は1ミリ厚。

銅板は、叩くことに硬くなり、600度ほどに熱することで柔らかくなります。
叩いては、バーナーで火にかけ柔らかくする。その繰り返し。
カップなどは、10回ほどの焼き鈍しですが、今回は28回の焼き鈍しで形になりました。

垂直に立ち上げる場合、底からばかり立ち上げると底角部分が薄くなり破れてしまうために、途中は胴体部分に道具を引っ掛けて立ち上げる部分を変えてゆきます。

今回は、口径が小さいため、ひとつ道具をつくりました。以前、コークス炉で熱し叩き、曲げておいた鉄の棒をヤスリで磨き込み、整えてゆきます。

表情が出てくる器。
最初の図案を変更させていただき、この表情を活かす形とさせていただきました。
口径の大きさが決まってきたら、胴体部分の肉を削ぎ落とし、細身に。
金切り鋏で、口の部分を平行に整えつつ、全体の形を出してゆきます。

粗々と大きな金鎚で形を作り、最後は小さい金鎚で表面を整えます。均しとゆう作業。この作業を通して、肉の厚みの違いについて気付かされます。
普段のカップ製作では、一番厚いのが口部、次が底、薄い場所が底角となりますが、香筒では、底から2センチから5センチほどの場所が1.5ミリほどと一番厚く、次が口部、底。薄いのが底角部。

表情を保ちながら均し、3つのパーツが揃うように、整えます。

胴体下部完成の後、中合の製作。
板を丸めて合わせ、溶接。茶筒などを軽く作るためには、このような丸めて合わせつくる方法が、主な製品として流通しています。
胴体下部と、中合のすり合わせの後、胴体上部と中合の擦り合わせ。香筒を携帯した際に蓋が落ちないような硬さを保ちながら、蓋を取り外す際には硬くなりすぎない。使う場面を想像しつつ、調整を繰り返します。
今回は、スクリューキャップのように、捻りながら開け閉めするとゆう方法を提案させてもらいました。


全ての形が完成したら、器を綺麗に磨き、硫化カリウムを溶かした液に漬け込み、黒くします。その後、磨き落とし、緑青硫酸銅の混合液の中で2分ほど煮込み完成。
このような仕上げをすることで、指紋がつきにくく、色の深みがでる銅器となります。

自分では発案しないような、背の高い香筒を製作することで、鎚起銅器が1ミリ板の中で細胞が移動する姿を確認することができました。
叩き上げ手をかけることで、普段は見えない銅器の表情をを感じることができ、貴重な経験となった香筒づくりです。

最近は、殊に海外からのお問い合わせが増え、フランス、オーストリア、台湾、香港など各地からmailをいただき、鎚起銅器をお伝えする機会が増えていることを、心より嬉しく思います。
そんな中、HPを製作してもらった、新潟市ツムジグラフィカ高橋トオルさんが更にHPを進化してくれました。

中程で、動画が観れるようになりました。
この動画は、8年前の夏に、新潟市秋葉区の三方舎さんにて、初めての個展を開催させてもらった際に、代表の今井正人さんがつくってくださったものです。
この動画のお陰で、沢山の方に鎚起銅器職人として知っていただき、独立後の基礎を固めることができました。

一枚の銅板を叩き起こし器にする鎚起銅器。
手元にある器全てに、器になった理由、そして、使われることで経年変化して行先があるものです。
この手仕事を通して、そんな器に対する想像力を育めたら幸いに思います。


改めて、この動画を通して、鎚起銅器の世界に触れていただけたら幸いです。
8年間、続けてこれた感謝を込めて。

フライパン24センチ

マネートレイ5寸ロゴ入り

表札 星野様

皿 リム付

コーヒーメジャー

カトラリーレスト

急須

弦巻き

2020.02.08

鎚起銅器の職人は、一から十までを一気通貫できるようにと、修行場ではおしえていただきます。
材料切りから、仕上げまでは当然のことながら、お客様とのやりとりをさせていただく中での発見も、職人としての大切な感性を育める機会と思います。
そして、そのような場は、とても大切だなと感じます。

普段、湯沸や急須を手にとっていただいたお客様から、この弦は、どうなんですか?と、お聞きいただくこともあります。こちらも私自身が巻いております。
弦の製作では、板を丸め、隙間を溶接します。
溶接した後に、木槌や金鎚を使い整え、その後、手の感覚で弦を曲げ形にしてゆきます。仕上げた後に、弦巻へ。

このように、飾り模様を巻きつくることを、峰を立てるといいます。

峰を立て、本体に取り付けて完成。

この籐の弦は使い込むほどに、茶が深くなり艶が増してきます。
この茶深艶も使い込むことでしか出てこない色となります。
一から十まで、一気通貫することで、お直し対応もスムーズに行えます。何か気になることや、使っていただく上でお困りのことなどありましたら、お気軽にご相談ください。

哲学者の鞍田崇さんにお声がけいただき。
先般の松屋銀座「工藝批評」展につづき、昨日より1月26日日曜まで、福岡市工藝風向様にての展示に、盆を展示していただいております。
福岡へは、銅鍋づくり体験で度々足を運ばせてもらっていましたが、このようにゆっくりと伺うのは初めて。福岡市内の仕事では行けない場所を巡る良い機会となりました。

今回は、初日のトークイベントがあるとのことで、私も拝聴しに伺うことに。
工藝風向店主 高木崇雄さんを司会に、鞍田崇さん、三谷龍二さん、菅野康晴さん、井出幸亮さん、広瀬一郎さんが登壇されて、30分おきに交代とゆうトークの内容。
そのトークをお聞きし、今の感じたことをまとめる一節として、記しておきたいと思います。

ものづくりをしている者としては、知ってもらうことと、それが行き過ぎることの兼ね合いを考えます。
高木さんが言われていましたが、今回の展示でも、初日に三谷さんの作品が欲しくて、朝8時から並ぶ。そんな状況をよしとするのかどうか?

作り手としては、知られなければ、この仕事では食べてゆけない。食べてゆけなければ、仕事量が少なく腕も上がらない。ただ、知られ過ぎて権威化してゆくと、ものを観る前に買われてしまう場合もある。
とゆう葛藤。
この兼ね合い。

また、インターネットが発達する中で、SNSをどう捉えるか?とゆうこともでるかと思います。SNSは私にとっての道具か、機械か?
私は、道具は自ら制御できるもの、機械は自ら制御できないものと考えますが、SNSで情報を発信すると共に、行き過ぎない、行き過ぎないでほしい。
本もまた、情報を広めるための手段のひとつと思いますが、本を手に取るほどのハードルもなく、広がってしまう情報になってしまわないかどうか。
その点では、HPを基軸として、faceookで自分を発信し、インスタグラムで商品情報を貯めてゆく現状が、私の程よさなのだろうと思います。

人それぞれの程よさ、生活の在り方で、今までの先達の環境よりも、小さな環境でもよしと思える世代もいるように思います。
バブル世代を超えた世代と、その後の世代とのお話も、広瀬さんからありましたが、どれくらいで満ち足りるのか?の基準の違い。
これから大きな情報の場で共有することでもないのですが、菅野さんが言われたように、ものを通して語り合うことで、育ってゆくものでもあろうかと。

このあたり、作り手の私とゆう現状を踏まえて、少しずつ括りを広げてみたい。
兼ね合いを大きく観ることは難しいことだとは思いますが、その兼ね合いを持ち寄ることで、観えてくることがあるのではないかと。
そのためにも、語り合う機会を持つこと。かなと。
まずは、昨晩の印象の一つとして。今後も鎚起してゆきたいと思います。

先年、銀座松屋様で開催された「工芸批評」展が、福岡でも開催され参加させていただきます。
鞍田崇さんにお声がけいただき、ツバメコーヒー店主の企画デザインしてくれた盆を5寸から1尺まで展示販売させていただきます。
福岡での展示は初めてとなりますが、多くの方に鎚起銅器に触れていただけたら幸いに思います。2020年1月17日(金)〜26日(日)
工藝風向(福岡県福岡市中央区赤坂2丁目6−27)
11:00〜19時30分
会期中無休
https://foucault.tumblr.com/post/190074411813

17日にはトークイベントもあるとのことです。
私も新潟からお話を聞きに伺います。
タイミングの合う方は、是非。
*要予約、先着順 工藝風向までご連絡ください。
 1月17日(金)19時より、2時間ほど
 話し手 三谷龍二、井出幸亮、鞍田崇、菅野康晴、広瀬一郎、高木崇雄
 会 場 珈琲美美
 会 費 3,000円 珈琲付