日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

現在、鎚起銅器職人大橋保隆として
銅鍋づくり体験を日本各地で開催させていただいています。

銅鍋づくり体験とは、30センチほどの一枚の銅板を、4時間ほどをかけて叩いて叩いて形にする体験会です。
この体験会を通じて、一枚の板から器が出来上がってゆく事を実感していただき、その道具で日々の生活を彩っていただけたら幸いです。
銅鍋は、即席にできるものではありません。
けれども、その体験の中から生まれた銅鍋は、きっと愛着の持てる一生の道具としてお使いいただけると思います。

流れとしては、木槌と木台を使って形を作り、金鎚と当て金で模様を入れ、真鍮の取っ手を私がつけさせてもらい、最後にローマ字と数字の刻印から選んだものを打っていただき、完成となります。

自分で生み出した銅鍋でのお料理は、また一層美味しく感じられると思います。
熱の伝導率が良いので、お湯の沸きも早く、炒め物などにも使える万能の銅鍋です。
お手入れも簡単で、お使いいただいた後に洗剤で洗っていただき、水滴をとっていただければ、一番のお手入れ方法です。

銅鍋の特徴は
●熱伝導率がよく、まんべんなく熱がゆきわたる。
  水も驚くほど早く沸騰し、煮物は芯まで柔らかく仕上がる。
●銅イオン効果(茹で野菜が色鮮やかに仕上がる)
●抗菌性が高く、衛生面で改めて脚光を浴びています。
●鉄分を体内で吸収するために銅分は必要な場所に運ぶ働きをしており、鉄の吸収を助ける物質として、貧血を防ぐ働きがあると言われています。
●IHには、使えません。

基本は、10時〜16時
料金は、お問い合わせください。
お呼びいただければ、日本各地へ伺います。
大きな音が出せる場所が、一番の要点となります。
ご相談は、お気軽にお問い合わせください。

参加者さんのその後のお料理の様子は以下よりご覧ください。
鎚起銅器てづくり銅鍋愛好会

先日の緑青についての続き。
それに関連して、湯沸や鍋、コップなどの内側に着いている錫鍍金(すずめっき)についても。

緑青が毒だと言われていた時代に、食品が触れる部分には錫鍍金か銀鍍金をひいてくださいとの指導があったそうです。
その流れで、無毒が証明されても、今でも鎚起銅器には、錫鍍金が施されています。
一部では、銀鍍金や金鍍金を使用しているところもあるようです。
錫鍍金には、「電気鍍金」と「手での鍍金」があり
私は後者の手での錫鍍金をしています。

銅鍋づくり体験で、お持ちしている材料はこのように製作しお届けしています。
手鍍金の方が、びっちりと銅の表面を覆うことがなく
銅の成分が出てき易いと思うので、私はこの方法をとっています。
近々、研究所と共にこの辺りはデータ的に解明して、お伝えしたいと思っています。

鍍金は古くは、紀元前1500年メソポタミア時代から行なわれていたといいます。
有名なところでは、エジプトの時代 ツタンカーメン
また、日本でも奈良の大仏を金鍍金するために大量の金が使われたと言います。
現代でも、電子機器には電気鍍金の技術があることで、これだけのIT時代となっています。
緑青に付随して、こんな錫鍍金のお話もお伝えしてみました。

また、この辺りにつきましては、今後も加筆してゆきたいと思います。

日本各地を訪れ、銅器をお伝えする中で
緑青のご質問を受ける機会が多いので
こちらにも書かせていただきます。
以前は、緑青はその色などの影響でしょうか
猛毒と思われていた時期がだいぶあります。

しかし、昭和59年に東京大学の医学部が無毒を証明し
安全であることが確認されました。

「そもそも、緑青はなんなのか?」とゆうことですが
一言にすれば、銅の錆です。
寺社仏閣の屋根や大仏、アメリカの自由の女神なども
この銅の錆により、あの様な色になっています。
屋根に使われる理由としては、緑青は銅の保護膜となり
合金になることで硬くなります。

 こちらの画像は、一緒に働いていた後輩の作品です。
このように、緑青を出すこともあります。

「緑青は、何故発生するのか?」に関しては
汚れがついたまま、放置しておくと発生します。
ですので、花瓶などは時々、柔らかい布で乾拭きをしたり
銅鍋などは、お使いいただいた後に、洗った後に水滴を拭き取ってあげると
一番いいお手入れ方法かと思います。
特に、乾煎りしたり、油をひいておく必要はありません。

「もし、緑青がでたら?」
割り箸などで、擦りとってあげ、また使い続けていただけたら
銅の使い込んだ色は戻ってきます。
一番、有りがちな状況としては
桐箱に入っている銅器を、お客様の来られた時にだけ使い
汚れがついたまま、桐箱にしまいこんでおいて、緑青がでていた。
とゆう話しは、聞くことがあります。
一番いいお手入れは、日々使ってあげること。
鎚起銅器では、仕上げの際に表面を安定的に酸化させることで、あの色を出しています。

あの地の色があるお陰で、表面の艶やかさや深みは、一層増すことになります。
詳しくお知りになりたい方は、日本銅センターのHPをご覧下さい。

日本銅センターHP
http://www.jcda.or.jp/recruit/tabid/87/Default.aspx
古来から、人類と身近な銅器。
是非、使い込み、ご自身なりの色や風合いを楽しんでいただけたら幸いです。

表札製作

2019.01.06

集い安らぎの場所となる大切な家。
そのお宅の顔に成る表札製作の制作風景です。

この度は、いつもお世話になっている
新潟市北区松浜の建築事務所 nico様のご自宅の表札製作。
nico様 HP http://www.atelier-nico.com

おじい様の書を表札にしたいとのご依頼。
このように書いていいただいた文字を表札にすることも出来ます。
先ずは、文字を反転させて、銅板に写し込みます

その後に、松ヤニとゆう、あたためると柔らかくなり、冷めると固くなる性質を持つ道具に銅板をつけ、松ヤニをあたためながら、鏨で打ち込みます。

鏨。
鉄の棒を自分で削り様々な形をつくります。

数十本の鏨を、その模様によって使い分けます。

裏部からの鏨作業の完了。

銅板を外した後の松ヤニ。
裏面からの鏨作業の後は、逆に松ヤニに銅板を付け、表面から凸凹を抑える様に鏨で均します。
均しの後は、1センチ程、四方を曲げて、立体にします。

形が完成したら、硫黄の成分で黒くし。

文字の部分だけを磨き出し。

全体を艶を出す様に磨き、緑青硫酸銅の混合液で煮込み、色を定着させ、完成です。

お宅と共に、家族と共に成長してゆく銅の表札。

その風合いの変化も楽しんでおいた抱けたら幸いに思います。

鎚起銅器の技術が詰まっている湯沸。
口をすぼめたり
淵を巻き込んだり
取っ手や口や蓋などの小道具と言われるものの擦り合わせなど
湯沸には、様々な技術が詰まっています。
ですので
一生物の鎚起銅器の中でも
この湯沸が私の一番のお勧めの器です。

​​湯沸のことを知っていただきたく
実験をしてみました。
銅湯沸でどれくらいの時間でお湯が沸くのか
どれくらいでお湯が冷めてゆくのかの実験。

カセットコンロの上で水 1.5リットルを入れ
95℃まで沸かすのに9分18秒かかりました。
そして
5分後には89℃に
10分後 85℃
15分後 81℃
20分後 77℃
25分後 73℃
30分後 71℃
40分後 65℃
50分後 61℃
60分後 58℃
と変化をしてゆきました。

また、0.5リットル沸かすのには3分44秒。
次回は、他の素材との比較をしてみたいと思います。
銅は熱伝導率が良いので、温まり易い素材と言われています。
ただ、「温まり易いだけに、冷め易いのでは?」とゆう疑問も生まれます。
銅が温まり易く冷め難い性質は、熱容量と関係があるようです。
熱容量とは、比熱×重さではじき出される数値。

 比べていただくと
熱伝導率の違いによって、
普段お使いになっている銅と鉄の鍋やフライパンの温まり方の違いが
数値でもご理解いただけると思います。
また
アルミニウムも熱伝導率が良く比熱も高いのですが
比重が小さい為に、厚い材料なら熱容量が得られるとゆうことになります。
このように、私も本日、数値で学んだ事を
実地に活かしてゆきたいと思います。
銅の材料の厚みを、湯沸や鍋、フライパンなど
道具の使われ方、活かし方によって、更に的確に変えてゆきたいと思います。
また、今日のお昼に解凍したお肉。

 こちらも、銅鍋の中にいれて、放置しておくと、ディップが出ません。
きっと、これも銅鍋の熱伝導率や熱量料の効果なのだろうと思います。
是非、みなさんも実感していただけたら、幸いに思います。

ご自身で、一日をかけてつくる、銅鍋づくり体験も、毎月1回。
三条ものづくり学校様にて開催中です。
また、お仲間を集めていただけて、音が出せる環境がありましたら
道具を積んで、全国各地に赴かせていただきますので
お気軽にお問い合わせ下さい。

本日
2019年1月1日より
新しく一歩を踏み出すこととなりました。
新潟市 ツムジグラフィカ 高橋トオル氏のデザインにより
HPを開設致します。

高橋トオル氏とは、新潟市秋葉区三方舎様での初めての個展の際に
動画の撮影をしていただき、それより6年半に渡り
様々にフライヤーやパンフレットなどのデザインをしていただきました。

http://www.sps-i.jp/event/201208tsuiki/index.htm
三方舎様での初めての個展

この6年半、私の成長する姿を支えてもらいました。
またここからも
どんどん成長してゆけるHPとなれば
と思っております。

このblogでも
イベント情報や銅器のこと
日々感じていることや
旅日記などなど
様々に発信してゆきますので
時折、ふとした時に足を運んでいただき
日本の片隅で銅板を叩き続けている職人の姿を
ご覧いただけたら幸いです。

日々の生活の中で、成長してゆく鎚起銅器
その器を使っていただくことや
その製作を通して、想像力を育んでもらえるように
精進を続けてゆきたいと思います。
今後とも、何卒、よろしくお願い致します。

大橋保隆 拝