日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

篆刻講座

2020.07.13

年に数回開催される、新潟絵屋さん企画の書家 華雪さんによる篆刻講座。
華雪さんの講座は、歴史を追いながらその時代時代の文字を彫るとゆう流れで、座学を丁寧にお話ししてもらってからの実践で、頭と手を通して、文字を捉えることができます。
今回は、漢の時代。
劉邦から始まる、長い漢の歴史の中で、画一化されゆく様々なこと。文字もその例外ではなく。地域性が影を潜め、流通するなかで私にも馴染みが出てくる形となってきているようです。
身分証明として篆刻を持ち歩く、またそれを奪うこともあった、なんて話は興味深いものです。

文字の配列も自由さから、四角の中で均等に配置されます。文字の太さも均等に。
均等だけに、彫る作業も難しくなってきます。

印を押してみながら、徐々に形を整えてゆく過程で、刃物と馴染むとともに、素材の質感を感じることの大切さを、改めて感じます。
経験不足な私は、なかなかこの素材の全貌が見えてきませんが、今回も4文字を彫り込み、大切な篆刻がまたひとつ加わりました。
手紙を書いて印を押す際の楽しみ。その一手間に感じる心地よさ。
何々レスと言われる世の中で、この篆刻が生活の中にあると安心します。
仕事とは違う集中時間でリフレッシュ。
次回を楽しみに、また鎚起銅器に励むとします。

今回の砂丘館さんは、旧日本銀行新潟支店後。
大きな畳敷きの広間から庭を眺めつつ、心地よい風が吹いていました。

フライパン

カップ

コーヒーメジャー

真鍮スプーン

カップ

真鍮スプーン

イイハシナオタカ

イイハシナオタカ

イイハシナオタカ

イイハシナオタカ

ピッチャー

Roots猪苗代

2020.06.20

私の製作している鎚起銅器を応援してくださっている、福島県猪苗代町の工務店Roots様が拠点を移動し、廃校になった学校を利用し店舗を新しくされるとゆうことで、伺ってきました。

場所は、猪苗代湖畔49号線から少し入ったところにある小学校。
中には、Rootsさんの提案する暮らしを実感できるお店が1F、2Fと並んでいます。
1階には、地元燕三条を代表するsnowpeakさんのショップやカフェ。
2階には、絨毯をはじめとする暮らしの中で育める道具たちの販売もされています。私の鎚起銅器もオーダーメイドをしていただけるような展示をしていただく予定となっております。

世の中の情勢により、スモールオープンとして、この6月26日金曜日から、一般の方にもご覧いただけるとのこと。
ご注意いただく店などもありますが、是非、お近くに来られた際にはお立ち寄りいただけ、実感していただけたら幸いです。

このように、公の場を地元の工務店さんが活用し、素敵な空間を築いてゆく取り組みは、とても大切なことと感じます。
暮らしの学校として、過去から現在、そしてこれからどう住まいと付き合ってゆきたいのかを考えるひととき。
私も協力させていただくことで、人生の中で大切にすること感じていただけたら幸いに思います。

また、OPEN後の模様もupさせていただきたいと思いますし、これからここでのイベントも開催予定ですので、その際もご覧いただけたら幸いです。

前回、募集をしたのが2019年8月30日。
その際には、お手伝いの方もいいかな、と思っていたのですが、やっぱり違うな、と思い返し改めての職人募集。
以下、前回のものを踏まえつつ、書き直してみましたので、ご縁のある方がおられましたら。
一緒に生命を育む仕事をしてもらえたらと思います。

この5年程で大きく変ってことと言えば、お陰様でご注文を多くいただけるようになりました。このよう個人で職人を続けてゆけるとゆうことは、多くのご縁に恵まれてとても有り難いことだと、心から感じています。
また、仕事が多くなったことに伴い、線を引く、銅板を切る、鑢をかけるなど、下仕事が多くなりました。
下仕事が多くなったとゆうことは、これから鎚起銅器に触れ始める人にも仕事を依頼し収入の見込みができるとゆうこと。と共に、銅板に触れる経験を上げる好機が増えるとゆうことでもあります。
線を書いたり、鑢(やすり)を使ったり、錫をひいたり、この辺りの下仕事は、1ヶ月〜2ヶ月もすれば、できる仕事と思います。

そこで、職人になりたい人と募集をしたいと思います。
職人は、一緒に器を生み出す生命を預けるだけに、私の身内のように私の持てる技術や道具なども、できる限り提供してゆきたいと思っています。と共に、日々厳しい仕事をすることになります。
また、道具を大切にできるようになれば、鍵を預けて私が居ない時も、工房を管理してもらうこともあるでしょう。
そのあたりの感覚は掃除の仕方などから覚えられるものと思って居ます。

鎚起銅器とは、文字通り、一枚の銅板を金鎚で叩き起こし、器にする仕事。
職人修行には、時間もかかりますし、下仕事より先の仕事では、私が5分で出来ることに、2日も3日もかかってもできないこともあるでしょう。
そのひとつひとつの習得を、素直に丁寧にしてゆくことが大切と思います。

今の私の仕事の基本時間は5時30分過ぎに起床、身支度や掃除を済ませて、6時から事務仕事、8時00分頃に音を出せる様になったら製作に入る。12時頃に30分から1時間30分、その時の体調に合わせて昼休みをとって、19時30分頃まで製作。まま休憩有り。
仕事が混んでいるときは、際限なく仕事をするときもあります。徹夜のときもあったりしますし。打ち合わせのある時には、17時30分頃に仕事をやめて、身支度を整えて、夜の街に出る事も。
バーナーを多用したり、粉を使う仕事もあるため、エアコンが無いので、夏は暑く、冬は寒い工房環境です。

そんな、職人募集を、改めて始めたいと思います。
1、道具を大切にできる人
2、掃除を丁寧にしてくれる人
3、年齢25歳までの男子
4、鎚起銅器で、生計を立てたいと思っている人
5、大橋のうざったい迄の身近さを許容できる人。

以下、私のことなどを書き綴りました。
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私が鎚起銅器に出会ったのは、44年程前。父親が、燕市の老舗 玉川堂の工場長をしていて、家にも銅器が沢山あったように、おぼろげながらの記憶の中にもあります。そして、私も同じ職人として、22年目。10年玉川堂で修行し、12年前に独立をさせてもらいました。私の目指す銅器は、「想像力を育むうつわ」。なので、全てを手作業で成形してきます。金属が伸びながら縮む、一枚の板から、湯沸など器ができる様は、私自身、今でも不思議な感覚を持ちづけています。そして、その成形に対する自由度が高いのが、鎚起銅器の特徴でもあると思いますし、私も自由でありたいから独立した様に思います。
独立当初は、前職からの下請けをいただき、300万円程の年収で推移していました。数年して、下請けの仕事もなくなり、独自の営業を始めた頃には、150万円とゆう年収での推移。ちゃんと仕事として生活をできるようになったのは、5年ほど前、三方舎さんでの初個展をきっかけに、仕事が増え始めました。
3年前は、350万円、2年前は、400万円、前年は500万円と、収入も増やすことができています。
そこにゆくには、前職からの修行の下支えとがあったからこそ。
新しく修行を始める人には、その下支えの部分の補強をしてゆきたいと、強く願っています。
続けられれば、鎚起銅器の中でも手打ちの職人として、数少ない存在になれるかもしれません。
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他、普段の仕事の様子は、こちらのyoutubeをご覧いただけたら、映像としてご覧いただけます。
ご関心、ご興味ある方は、まずはお会いしてお話できたらと思っております。
職人は覚悟を持てる方、心よりお待ちしております。

2020年6月14日
大橋保隆 拝

小1文集

2020.06.11

2004年の中越沖地震の際に長岡市の震災ボランティアで出会った、東京の絵描き 長友心平さんが私の小学校一年生の時の文集を書き起こししてくださり、最近突然に送っていただきました。
なんとも稚拙で、文字量を増やすために書いていた文章と感じますが、父のことを書いています。
特に、今の仕事がやりたかったわけでも、どうしてもこの仕事ではなければならなかったわけでもなく。
この仕事しかなかっただけ、なのだろうと思う今日。
長友さんへの感謝を込め、ここに書き留めておきたいと思います。

「お父さんの仕事」
ぼくのお父さんは、つばめ市の玉川堂とゆう所につとめています。
その所で作っている物は、ついきどうきとかちゃたくとかです。
ぼくのお父さんが、作っている時は、コツコツコツコツ音がします。
はたく所をまちがえると、それをなおさなければいけません。
でもなおすのには、時かんがかかります。だからしんけんにやってます。
とんかちをとりにいくときも、どれがいいかしんけんです。
みんなの作っているのを見にいっているときは、わらう時もあります。
でも、お父さんは。 「ちゃんとやっているか。」 といいます。
するとみんなは、 「ちゃんとやっています。」 といいます。
でもそれは、トントンゆっている時はあまり、聞こえません。
お昼ごはんの時は、みんながくるので、トントンとゆう音はあまりありません
。だからみんなはゆっくり食べます。
またはじめる時はみんなが作っているのをみます。
だけど、見ない人もいます。
おとうさんは、作りおわると、こしをたたきながら作ったのをまんぞくそうに見ながら、 「やっとできたな。」 といいます。
まちがえなかったからです。
ぼくも、こうゆうゆっくりこつこつやるしごとをやりたいです。

新潟県上越市の塗師 飯塚直人さんとの共作「イイハシナオタカ」は、鎚起銅器と漆の組み合わせで、独特の表情がでます。
写真ではご覧いただけにくいところがありますが、飴色の表情が鎚目に映えて、様々な表情をみせてくれます。
新潟市内では、ヒメミズキ様、地酒の都家様にてお取り扱いいただております。
是非、手にとっていただき、肌触りも実感していただけたら幸いに思います。

工房に籠る日々が続く昨今。この場所を整えることを進めております。
その際に、真鍮を使っての金具づくりなども、心地よい空間をつくるための良いアイテムとなります。
昨日作った、鋏をを掛け。
ずっとしたいと思っていたことを徐々に形づくっております。

他、昨年の工房改装でつくった金具達。

このような、鎚起銅器ではなくても、鎚起銅器作成の中で育んだ技術を使っての金具づくりをこれからも進めてゆきたいと思います。
お家の中で、こんな場所にこんな金具があったらいいな。とゆうご希望がありましたら、長さなどオーダーでお作りいたします。
真鍮棒の太さ、形状などにより様々な形をお作りします。
取っ手やタオル掛け、などなど。
各種2,500円位から承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

現在、家に籠られているみなさんも多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
FBページには、鎚起銅器てづくり銅鍋愛好会があり、銅鍋料理を楽しまれている姿を拝見し、私も製作エネルギーともなっております。
昨年は、ギャラリースペースの改装と共に、キッチンも新しくなり、ここで銅器を体験していただけるようになっています。

そんな中、私も最近は様々な銅鍋料理を。
その一部をupします。

いろいろが落ち着いたこの秋には、また、銅鍋づくり体験全国ツアーを開催したいと思いますので、その際は、是非お声がけやご参加いただけたら幸いです。

銅鍋づくり体験の模様
https://tsuiki-oohashi.com/2019/07/11/3122/
銅鍋づくり体験について
https://tsuiki-oohashi.com/2019/01/13/2361/

新潟市東中通1番町ティオペペさんのお惣菜のあたため。
銅は熱が全体に包み込むようにあたたまるので、このようなお惣菜にもぴったりかと感じます。

先日、クッキングライフnukunukuさんで習ったペペロンチーノを、ふなくぼ農園さんの玄米麺で。

シンプルに、チャーハンも卵はふわふわで、お米はパラパラに。

小さい銅鍋を使い、大阪の薩摩の牛太さんからお取り寄せした、ハンバーグを。
銅鍋の効果か、ふっくらと焼けたように思います。

そして、牛太さんからのお肉を解凍する際にも、銅鍋は活躍してくれます。
銅の熱伝導率の効果でしょうか、ディップが出にくいため、私は、いつも銅鍋の上で解凍をしています。

お宅で楽しむ時間のお供として、銅鍋が活躍してくれること、嬉しく思います。
ご自身の手で生み出した銅鍋で、生活を楽しんでいただけるよう、今後とも各地に伺わせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。

本体に続き、小道具と言われる、口、耳(本体と取っ手を繋ぐ部)、蓋、中合(本体で蓋を支える部)、取っ手の製作。

先ずは、耳から。
今回は、3ミリ厚の銅板を切り出し、削り込み形をつくります。
一般的には図右側のように、折り曲げて本体との接合部分を多めに取りますが、今回は立てるような取り付け方法を考えました。
ひたすらに削り、本体と擦り合わせをしながら形を整えます。

そして、今回の特徴的な部分として、口が今までとは大きく違うものとなりました。
一般的な湯沸の場合、多くの湯量を出すため、注ぎ口も大きくなりますが、今回は細く淹れるための形を考案させてもらいました。
湯沸は湯切れや湯量の調整をどうするのかが、肝と考えます。ご依頼いただいたイメージに近づけるように。

ここでも、ゲージをつくることから始まります。
そして、焼き鈍しをした銅板から切り出し、金床の上で木槌を使い丸めてゆき、背中を溶接で合わせます。

合わせた後、これらの道具を使い整形。
ここでも焼き鈍しを行い、3回ほど柔らかくしては叩きを繰り返します。

各部のポイントを押さえながら、湯の流れをイメージします。
袋に溜まり、しなりと背中を通り唇から湯が出て、どう戻るのか。
出ることと共に、戻り方により湯の切れ具合が決まってきます。

口、耳の部分を本体に接合。
口を本体に擦り合わせ、穴を開けヤスリで削り嵌め込みます。
金属ですので、擦り合わせもヤスリで削り、様子をみては削りを繰り返します。
嵌め込んだら、錫で目止めをし、水漏れがないかを確認。

続いて、蓋と中合の製作。
二つの板を同時につくり始めます。
中合は本体の口径に合わせつつ、蓋は中合に合わせつつ。
形が決まったら、中合は中心部分を切り落とし、異物が混入した場合にかき出せるように、欠けを切り。本体に合わせ錫で小口を溶接し、ヤスリで整えて。

全体の形が決まったら
最後は、取っ手の製作。
銅板を丸めてつくる取っ手が一般的で、今回も一度試作をしてみたのですが、バランスが合わずに、真鍮の平板に変更させていただきました。

真鍮は、銅と亜鉛の合金で、銅とは親和性があります。
銅と比べ、硬さがあり、熱伝導率も低いため、ミルクパンやフライパンなどの取っ手にも使用します。
取っ手の特徴は、この耳との接合部。図のように穴に銅鋲を通して、叩いて締めるわけですが、この時、取っ手の接合部の曲がりによってバネが効き。バネが効くことで、取っ手の可動領域が決まって来ます。
このバネの効き方の調整にも、それぞれの職人の個性がでるところ。

取っ手が完成したら、本体部分、蓋をよく磨き仕上げたら完成。
取っ手には、籐の蔓を巻いて、本体に取り付け。
蓋には、いただいた木のつまみを取り付けます。鎚起銅器の弱点であるつまみを木で補強していただくことで、一層使いやすい湯沸となりました。

今回は、2つの湯沸を同時並行で製作し、ひとつを手元に。
画像は、手元にあるもので。つまみ部分は試作していただいた小さい方を使用しているので、お届けしたものと少し雰囲気は違います。
こちらは、ある企画のために製作されたもの。その企画は秋頃に発表予定です。

今回、デザインをいただいた中で、この湯沸を製作させていただき、私がいつか試してみたいとゆうことを、各所で詰め込むことができました。
一番大きな特徴は、やはり注ぎ口。
工房でほっと一息つく際に淹れるコーヒーの楽しみの質が、この注ぎ口のお陰で一層深くなりました。
生活を楽しむ道具として、このような形に出会わせていただいたことに、感謝しつつ。更なるご依頼にお応えできるように、腕を磨きたいと思います。