日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

弦の製作

2021.02.19

今回は、湯沸などの弦の製作工程をお伝えしたいと思います。
鎚起銅器に於いて、湯沸は沢山の技術が詰まっていると言われますが、この弦も職人それぞれの個性がでるところ。
どのように出来上がるのかを、ご覧いただけたら幸いです。
まずは、これも平らな板から。
徐々に、丸めてゆきます。この丸める作業は道具に当てながら丸めて行くわけではなく、木槌で空打ちで丸めながら、寄せてゆきます。
このように、中空になることで、銅の軽さが活き、熱が逃げる仕組みになっています。

繋ぎ目を銀ロウで溶接し、弦の形を決めてゆきます。

それぞれの湯沸に擦り合わせ、湯沸の耳との接合部分に穴を開けたら完成。
仕上げて、籐の蔓を巻きます。
この籐の蔓巻きも職人の好みが出るところ。

私は、峰を立てるのが好みですが、それぞれの湯沸の形状に合わせ、この辺りも変わってきます。
今回の動画は、見難い部分もあったと思うので、再度チャレンジしてみます。
今年は、このような動画も撮りためてゆきます。

2020年の大晦日で、工房の大掃除も終わり、明けて2021年。
1月4日、仕事始めとさせていただきました。
今年は、器に模様を施す、彫金の仕事。その中でも彫り込む鏨を使った彫金仕事を深めてゆきたいと思います。

燕の地では、金属製品がたくさん作られますが、その中でもスプーンやフォーク、ナイフなども世界中のシェアを占めます。
そのステンレス製のカトラリーを作る過程でも、彫金は重要な役割を持つもの。カトラリーの原型を彫る彫金師が、この地にはたくさん居ました。
居ました。と表現するように、今ではそれらの彫金の仕事も少なく、彫金師の高齢化が進み、後継者が居ない状況は進みます。

そんな中、私が師事した長谷川清師匠。
師匠は金型を彫る型彫り師としてご活躍される中、工芸の世界にも身を置かれる方で、私の父と同年。
玉川堂に入り3年ほど過ぎた頃から、仕事が終わった後や、土日の休みになると、師匠の工房に寄せていただき、彫金のいろはから教えていただきました。

師匠の彫金見本。

彫金の肝は、鏨とゆう金属の棒に刃をつけること。
最初は、銅の四角い塊を彫り崩し形をつくることから始まります。鏨は研ぐ角度により多様に表情を変えます。その表情は理に適っており、どう研げばどんな彫り跡になるのかを5年に渡り教えていただきました。

塊を彫る作業には、何十本もの鏨が必要となり、丸いもの、角があるもの、三角のもの、その大小や角度など、様々な形があります。
この様々な鏨を経験することで、銅器に彫り込む際にも柔軟に対応できるようになります。
こちらは、片切鏨といい、筆のような彫り模様を施すことができます。

最初に作ったのは、根付け特集で見つけた兎の模刻。

ご注文で彫らせていただいた模様やロゴ。

師匠から教えていただいたことは、本にまとめてあるものでもなく、口伝で伝えていただいたことばかり。
だんだんと衰退してゆくこの彫金とゆう技術を、どのように次世代に伝えて行けるのか。今年はよくよくと考えて私なりの鎚起銅器づくりを進めてゆきたいと思います。
みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

12月2日水曜より7日月曜まで開催される、東京神宮前 うつわ shizenさんでの三人展に、昨日は在廊させていただきました。
初日とゆうことで、事前予約でお客様がいらっしゃる1日。
1年振りの東京在廊に、お客様の声をお聞きできる機会のありがたさを、改めて感じる時間となりました。

そして、東京二日目。
移動前に上野の国立博物館に寄ってきました。
職人に成り立ては、月に1回はこの場所に通い、良いものを観るとゆう目を養っており、沢山のことを学んだ場所で、東京とゆう情報集積の渦の中に身を浸す大切さを、振り返っても感じる14年目の冬。
今回も、先達の技術や形だけではなく、日本の土地で数万年前から在るものの凄みや、人の祈りの力がつくりだすもの力を感じる時間です。

金工の先達のため息の出る作品達。
鈴木長吉

海野勝岷

加納夏雄

可愛い

先日、11月24日に発行された別冊太陽の「100年残すべきもの」に、長野県松本市の木工作家 三谷龍二さんのご紹介で湯沸かし掲載していただきました。

この湯沸は、鎚起銅器を通してものづくりを考えるための本出版に向けて、三谷さんに執筆をお願いする際に、デザインをお願いしたものです。
湯沸かしがお好きだとゆう三谷さんに、ご自身の使ってみたい湯沸かしを鎚起銅器に於いてデザインしていただきました。
そして、技術面や銅の特性との兼ね合いを相談させていただき、このような形になりました。

詳細につきましては、こちらのブログをご覧いただけたら幸いです。
湯沸かしづくり その1
https://tsuiki-oohashi.com/2020/04/26/3926/
湯沸かしづくり その2
https://tsuiki-oohashi.com/2020/04/27/3960/

この湯沸かしは、現在、三谷さんのお店10cmさんで取り扱いしていただいております。新たなチャレンジが込められたこの湯沸を、是非手に触れていただけたら幸いです。

このように掲載いただいたことを光栄に思いますし、鎚起銅器の技術をを次の世代、またその次の世代へと繋いでゆきたいと、改めて感じ。更に精進を重ねたいと思います。

湯沸 1.8ℓ

パエリア鍋

ランプシェード

ランプシェード

ランプシェード

ランプシェード

鎚起銅器では、一人の職人が最初から最後まで製作できるようになることが大切となります。
一貫した作業。
このような銅の弦に籐を巻きつけることも全てします。
マニアックな映像となりますが、淡々と巻き続けることで、一定のリズムが生まれる弦巻きです。

巻いた弦に、飾りを入れる作業。

この10月16日金曜から18日日曜まで、新潟市松浜 アトリエ ニコさんにて開催させていただいた、大橋保隆と川嶋理良の二人展「Touki to Douki」の後編になります。

中編でお伝えした共作の他にも、生活の身近に置いていただけたら、そして楽しいひと時のお供になればとゆう食器がたくさん並びました。

鎚起銅器をデザインしてくれた、箸置きやブローチも。

私も、昨年の工房階層の際に製作し、製品化した真鍮の金具も展示。
一枚の銅板を叩き上げて形にする器ではないのですが、鎚起銅器を製作する中で育まれた技術を使ってのプロダクト。
部屋のどこかにそっと、取り付けていただけたら嬉しく思います。

羽ヶ崎家で毎日愛用してくださっている、コーヒーポットもこの三日間は出動、香り高いコーヒーを沢山の方が楽しんでくださいました。このように、鎚起銅器が実際に使われている模様に触れていただることも、嬉しい時間です。

庭には、りらさん作のロバも。
りらさんは、このような動物シリーズも製作されていて、ほっこりとするようなアイテムも。

このような形での二人展は初めてのこと。
大橋保隆と川嶋理良。お互いが日々ものをつくる中で感じたことを、言葉にしやりとりを重ねる中での発見が、形になったと思います。
私たちが製作した器もそうですが、訪れていただいた空間に満ちる雰囲気も、羽ヶ崎家のみなさんの日々の営みが染み込んでいる場所だからこそだなと感じる三日間でした。

訪れてくださった皆さん。
遠くから応援くださった皆さん。
気持ちを向けてくださった皆さん。
様々なみなさんのお力をいただき、秋晴れの中、展示会を終えることができました。
今回いただいたことを糧に、また、数年たち成長した姿でお会い出来るように、日々の製作に励んでまいります。

この会期に向けて、製作した共作の数々。

後編では、三日間の会場の模様をお届けしたいと思います。

10月16日金曜から18日日曜まで、新潟市北区アトリエニコさんで開催させていただきました。大橋保隆 川嶋理良二人展「Touki to Douki」は、134名のみなさんにご来場いただき、盛況のうちに幕を閉じることができました。
ご来場をいただいたみなさん、ご関心を向けくださったみんさん、また会場を快く提供してくださり、三日間をあたたかくサポートしてくださった羽ヶ崎家には心より感謝します。
今回のTouki to Doukiの始まりは、先年、私の工房に併設されている生活手仕事研究所の改装の際に、建築士である羽ヶ崎さんが協力してくださり、その際に生まれた真鍮の金具をいつか展示したいと話しており。
そして、群馬県高崎市はるなの陶芸家 川嶋りらさん(以後、りらさん)にお会いし、ものづくりについての話が深まる中で、アトリエニコさんの会場に器がぴったりだなと私が感じたことが始まりでした。

アトリエニコさんは建築事務所であり、水曜木曜金曜はカフェとして営業されて、ご自身たちで作り上げた空間をお客様に感じてもらっています。
その中に、りらさんの器を提供しお菓子を出していただいたりと、その溶け込み具合を会期前からお客様に提供させてもらいました。

りらさんの生活を楽しんでもらえる器と共に。
この展示会に向けての目玉は、香炉やお重、キャニスターの共作。
りらさんが本体をつくり、私が蓋をつくるとゆう役割分担。思う存分に陶器をつくってもらい、それを受け取った私が蓋の形を考えてとゆう流れで、まずはひとつ目の香炉が出来上がりました。

普段の製作でも、私は蓋物を製作することはありますが、陶器との擦り合わせは初めて。土物の柔軟さにどう擦り合わせたらいいかを深く学ぶ機会。
もう少し、もう少しと鑢をかける。そのもう少しがどこまで続くのかと。なかなか思ったところに落ち着かない擦り合わせ。
しかし、その擦り合わせの中から、ぴったりと収まる点をみつける楽しさ。
このように共作は進んでゆきます。
後編に続く。

毎年、10月の第1週に開催される工場の祭典
新型コロナウィルス感染症の影響で、いつもの開催は中止となり。今年は、1ヶ月の動画配信となっているとのことです。
工場の祭典の期間に合わせて、私もツバメコーヒー の店主田中さんと様々に企画を積み重ねて来ました。その集大成が今制作を進めている「俗物」とゆう「ものづくり」「ライフスタイル」「欲望」を三本柱にした本の出版。
世の中としては、まだまだ混沌としていますが、こんな時だからこそ、毎年のことを続けてゆこうとゆうことで、今年もトークイベントを開催させていただきました。
毎年、とゆうことで。
いつも工場の祭典に足を運んでくださり、田中さんと私を見守ってくれている 哲学者の鞍田崇さんに、ディスカッションの場に向けて「インティマシー2020 -「弱さの工芸」と「俗物」―」とゆう題名で、話題提供をしていただきました。
また、鞍田さんとともに、今回の本にも執筆をしてくださっている、木工作家の三谷龍二さんもゲストとしてお迎えしました。三谷さんも、松本のご自身のお店10cmさんにて「弱さの工芸」と題して展示会を開催しておられ、鞍田さんの話題提供の後には、三谷さん、田中さんとの鼎談。
そんな模様が、2時間30分に私、以下の動画サイトからご覧いただけます。https://www.youtube.com/watch?v=xzYLyG0cm5Y&feature
10月11日までの限定公開になりますので、是非、この機会にご覧いただけたらと思います。

ものづくりと言葉。
それぞれの世界を行ったり来たりしながら。
咀嚼して
また咀嚼して。
そして、滲み出てくるものを感じるには、直ぐなにかとゆう訳ではない
ですが
この現場で感じたことを、噛み締めて日々の仕事を進めてゆきたいと思います。

また、このタイミングで、三谷龍二さんがデザインしてくださり、私が製作した湯沸の動画を、新潟市のデザイナー ツムジグラフィカ 高橋トオル氏が制作してれました。
デザインと銅の素材の擦り合わせをして形になった湯沸。このような道程でつくり、お届けに行く際の動画です。
湯沸づくりその1https://tsuiki-oohashi.com/2020/04/26/3926/
湯沸づくり その2https://tsuiki-oohashi.com/2020/04/27/3960/

こちらは、3分ほどの動画となっておりますので、合わせてご覧いただけたら幸いに思います。
https://www.youtube.com/watch?v=VAR6G0CtGyI
こちらも、すぐに形になるとゆうわけではないもの。すぐに形になるわけではないものの中に、人は何を感じるのでしょうか。
そして、今日も銅板を叩きたいと思います。