「伝統工芸」とゆう言葉を聞いて、どんなものを想像されるでしょうか?
この言葉には多義的な意味を含みながら、使われることが多いのですが、新潟県燕市のいち職人の視点からの「伝統工芸」を書き留めておきます。
まず、私の生業である鎚起銅器、これも伝統工芸と呼ばれることがありますし、200年前から燕に伝わる技術で確かに伝統工芸です。ただ少し視点を変えて国からの指定とゆう点で見ると、燕鎚起銅器として伝統的工芸品とゆう呼び方になります。
以下、伝統的工芸品産業振興協会HPより
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経済産業大臣指定 伝統的工芸品とは
●生活に豊かさと潤いを与える工芸品
●機械により大量生産されるものではなく、製品の持ち味に大きな影響を与えるような部分が職人の手づくりにより作られています。
●100年以上前から今日まで続いている伝統的な技術や技法で作られたものです。
●品質の維持や持ち味を出すために、主要な部分が100年以上前から今日まで伝統的に使用されてきた材料でできています。
●一定の地域において、ある程度の規模を形成してつくられてきたものです。
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伝統的工芸品は全国に236品目あり、新潟県には仏壇、漆器、刃物、織物なの16品目あり、東京、京都に次ぐ3番目。伝統定期工芸品として経済産業省から認定されるには、産地として地域産業としてある程度の規模が必要なようです。
このようなシールをご覧になったことがある方もおられると思いますが、この伝産シールが貼ってあることで、産地として伝統的工芸品として認めるとゆう証となります。ただ、このシールにもコストがかかるので、実際には伝統的工芸品としての技術でつくられても、シールを張らない場合もあります。
また、工芸の世界では、「伝統工芸」と言いますと、公益社団法人 日本工芸会とゆう会の動きを指す場合が多いです。日本工芸会は「用と美」を掲げ、伝統工芸展を開催しているため、私としてはこの会のことを伝統工芸と表現することが通常となっています。
この日本工芸会を登り詰めると、「重要無形文化財保持者」所謂、人間国宝に選定される場合があります。人間国宝は1つの技術に1名と決まっているため、実力がありつつ、時の流れを得た人が成れるようです。
鎚起銅器の世界でも、異なる金属を何重にも重ね、打ち延べて器をつくる鍛金に属する「木目金」とゆう技術で、玉川宣夫さんが人間国宝に文化庁の認定を受けています。
また、人間国宝と対をなすものが、文化勲章。
この文化勲章は、工芸の世界では日展などのオブジェなどの製作する作家さんが登り詰めると、こちらも文化庁から認定を受けます。
内実となりますが、人間国宝になると助成金として年間200万円。文化勲章をもらうと終身年金として年間350万円が支給されるとのこと。
この辺りの際も興味深いです。
無形文化財とゆう言葉がでてきたので付記しておくと、燕鎚起銅器は、記録作成等の処置を講ずべき無形文化財にも指定されています。これは、「衰亡の虞(おそれ)」のある伝統的な技術が指定されることになっており、1980年に指定されました。
衰亡の虞と言われるくらいですから、当時は厳しい環境だったのだと思いますが、それからの努力の末、今では伝統的工芸品の産地としては珍しく、若手職人も多く育ち、老舗の玉川堂はGINZA SIXに店を持つほどとなりました。
現在も日本の様々な場所で、様々な形で職人さん達が日々精進している中、伝統工芸とゆう技術が必要とされるようなものとなることを願いつつ、私自身も必要とされる鎚起銅器の道を目指し、一歩一歩と進んでゆきます。