最近製作 2020.2.14
ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています
鎚起銅器の職人は、一から十までを一気通貫できるようにと、修行場ではおしえていただきます。
材料切りから、仕上げまでは当然のことながら、お客様とのやりとりをさせていただく中での発見も、職人としての大切な感性を育める機会と思います。
そして、そのような場は、とても大切だなと感じます。
普段、湯沸や急須を手にとっていただいたお客様から、この弦は、どうなんですか?と、お聞きいただくこともあります。こちらも私自身が巻いております。
弦の製作では、板を丸め、隙間を溶接します。
溶接した後に、木槌や金鎚を使い整え、その後、手の感覚で弦を曲げ形にしてゆきます。仕上げた後に、弦巻へ。

このように、飾り模様を巻きつくることを、峰を立てるといいます。

峰を立て、本体に取り付けて完成。

この籐の弦は使い込むほどに、茶が深くなり艶が増してきます。
この茶深艶も使い込むことでしか出てこない色となります。
一から十まで、一気通貫することで、お直し対応もスムーズに行えます。何か気になることや、使っていただく上でお困りのことなどありましたら、お気軽にご相談ください。
哲学者の鞍田崇さんにお声がけいただき。
先般の松屋銀座「工藝批評」展につづき、昨日より1月26日日曜まで、福岡市工藝風向様にての展示に、盆を展示していただいております。
福岡へは、銅鍋づくり体験で度々足を運ばせてもらっていましたが、このようにゆっくりと伺うのは初めて。福岡市内の仕事では行けない場所を巡る良い機会となりました。
今回は、初日のトークイベントがあるとのことで、私も拝聴しに伺うことに。
工藝風向店主 高木崇雄さんを司会に、鞍田崇さん、三谷龍二さん、菅野康晴さん、井出幸亮さん、広瀬一郎さんが登壇されて、30分おきに交代とゆうトークの内容。
そのトークをお聞きし、今の感じたことをまとめる一節として、記しておきたいと思います。
ものづくりをしている者としては、知ってもらうことと、それが行き過ぎることの兼ね合いを考えます。
高木さんが言われていましたが、今回の展示でも、初日に三谷さんの作品が欲しくて、朝8時から並ぶ。そんな状況をよしとするのかどうか?
作り手としては、知られなければ、この仕事では食べてゆけない。食べてゆけなければ、仕事量が少なく腕も上がらない。ただ、知られ過ぎて権威化してゆくと、ものを観る前に買われてしまう場合もある。
とゆう葛藤。
この兼ね合い。
また、インターネットが発達する中で、SNSをどう捉えるか?とゆうこともでるかと思います。SNSは私にとっての道具か、機械か?
私は、道具は自ら制御できるもの、機械は自ら制御できないものと考えますが、SNSで情報を発信すると共に、行き過ぎない、行き過ぎないでほしい。
本もまた、情報を広めるための手段のひとつと思いますが、本を手に取るほどのハードルもなく、広がってしまう情報になってしまわないかどうか。
その点では、HPを基軸として、faceookで自分を発信し、インスタグラムで商品情報を貯めてゆく現状が、私の程よさなのだろうと思います。
人それぞれの程よさ、生活の在り方で、今までの先達の環境よりも、小さな環境でもよしと思える世代もいるように思います。
バブル世代を超えた世代と、その後の世代とのお話も、広瀬さんからありましたが、どれくらいで満ち足りるのか?の基準の違い。
これから大きな情報の場で共有することでもないのですが、菅野さんが言われたように、ものを通して語り合うことで、育ってゆくものでもあろうかと。
このあたり、作り手の私とゆう現状を踏まえて、少しずつ括りを広げてみたい。
兼ね合いを大きく観ることは難しいことだとは思いますが、その兼ね合いを持ち寄ることで、観えてくることがあるのではないかと。
そのためにも、語り合う機会を持つこと。かなと。
まずは、昨晩の印象の一つとして。今後も鎚起してゆきたいと思います。
先年、銀座松屋様で開催された「工芸批評」展が、福岡でも開催され参加させていただきます。
鞍田崇さんにお声がけいただき、ツバメコーヒー店主の企画デザインしてくれた盆を5寸から1尺まで展示販売させていただきます。
福岡での展示は初めてとなりますが、多くの方に鎚起銅器に触れていただけたら幸いに思います。2020年1月17日(金)〜26日(日)
工藝風向(福岡県福岡市中央区赤坂2丁目6−27)
11:00〜19時30分
会期中無休
https://foucault.tumblr.com/post/190074411813
17日にはトークイベントもあるとのことです。
私も新潟からお話を聞きに伺います。
タイミングの合う方は、是非。
*要予約、先着順 工藝風向までご連絡ください。
1月17日(金)19時より、2時間ほど
話し手 三谷龍二、井出幸亮、鞍田崇、菅野康晴、広瀬一郎、高木崇雄
会 場 珈琲美美
会 費 3,000円 珈琲付


先日、仕事始め前に研いだ金鎚を並べる棚が完成し、工房に搬入していただきました。
製作主は、新潟県出雲崎のOjn Handmad Hut ワダヨシヒトさん。
ワダさんには、前年夏の工房改装の際にも、キッチンの棚をつくっていただきました。
すっきりしたものから、可愛いものまで、幅広い製作をされるワダさん。
今回も前回と同じ硬めの材料で、しっかりと作っていただき、愛用の道具もすっきりと並ぶようになりました。
これで、道具を選ぶときも、すっと手が伸びるちょうど良さ。
環境を整えることを、今年はさらに進めてゆきたいと思っております。

鎚起銅器の仕上げに使う金鎚はピカピカに磨いたものを使用します。
この鏡面磨きが反転し器も鎚目が美しくなります。
すっきりと新年を始め、道具入れも整い。燕市の工房は良い始まりとなっております。



新年、明けましておめでとうございます。
新潟県燕市の鎚起銅器職人大橋保隆
2020年も無事に始動することができました。
本年もご縁のあるみなさん、何卒、よろしくお願いいたします。
毎年、1月1日に書き初めをするマインドマップ。
恒例になってから6年ほど経つでしょうか。
頭の中に浮かんでくる言葉を連ねて、今、自分の考えていることを整理しつつ、新しい言葉のつながりの中から、自分の可能性を開いてゆく。といった作業です。

今年も、8時間ほど没頭し、書き上げる中で、やりたいことを発見することができました。職人としての器作りの他にも、作家としてのものづくりを、ひとつ始めてみようと思います。
職人としては、オーダーいただいたものを、よりお客様の生活に寄り添った形にできるように、技術を高め。
作家としては、自分から湧き出てきたものを、素直に形に留められるように。
また、昨年の工房改装から、真鍮を使った金具作りも進めています。
その辺りを今年は整理整頓してゆきたいと思っております。
銅鍋作り体験も、今年もまた各方面からお声がけいただいております。
周辺で開催の際には、是非ご参加いただき、ご自身で生み出す銅器の愛おしさを感じていただけたら幸いに思います。
ただいま、決まっているスケジュールです。
銅鍋づくり体験
三条銅鍋づくり 1月19日(日)
https://www.facebook.com/events/584553005683493/
2月8日土曜、9日日曜 前橋市
三条銅鍋づくり 2月16日(日)
https://www.facebook.com/events/609190859884193/
三条銅鍋づくり 3月8日(日)
https://www.facebook.com/events/807090306403097/
3月27日金曜、28日土曜 福岡県
鎚起銅器職人を基軸として、ものづくりの可能性を開き、想像力を育んでいただける器づくりに、本年も精進してゆきます。
神戸での銅鍋づくり体験にお声がけしてくれた、書家の華雪さんから、翌日に奈良へ墨づくりの見学と、握り墨づくりに行くとのことで、ご一緒させてもらいました。
穏やかな冬の晴れ間に、ピクニック気分での奈良行き。
他の職人さんの仕事を見せてもらう、とても良い機会となりました。
向かった先は、奈良市内の墨運堂さん。大きな資料館と製作現場が一緒になり、製作現場も見学できるような施設です。


その日は、職歴17年の職人さんが居られ、実際に墨を製作されていました。
墨とゆうと、硬いイメージですが型から取り出した墨はまだ柔らかく、そこから水分が抜けることで、徐々に硬くなってゆくとのこと。
表面に施されている、このような木型も段々とつくれる職人さんが少なくなり、模様を彫る工程も今勉強中とのこと。
この辺りは、どこの伝統産業でも聞かれる話で、鎚起銅器の世界でも、道具をつくれる職人さんが、私の経験年数の中でも、確実に減っています。



墨の製作工程を見学させてもらい、この材料のほとんどは、私たちが彫金で使う松ヤニとゆう道具と同じだと知りました。私たちの使う松ヤニは油を使い、もっとドロッとしていますが松ヤニとすすと油を混ぜたもの。
温めると柔らかくなり、冷めると硬くなる性質があり、表札などの製作に使う道具です。
今回知って、そうかと思ったことの大きなひとつ。墨は竜脳で香りづけをしているとのことで、この香りづけをしないと、とても嗅げるような匂いではないとゆうこと。私の好きな墨の香りは、ここから来ていたのかと。



油を燃やし煤をとることが、とても大切な作業。煤の具合で、色も変わり、品質に関わる。
また膠を溶かす作業も根気のいる作業となっており、ゆっくりじっくりと溶かしてゆくとのこと。
その膠と煤や竜脳などを混ぜる作業も、模型のように、昔は人手で攪拌していたようですが、今は機会化が進み、だいぶ楽になったとおしゃっていました。
そこも、伝統工芸の共通点で、時代とともに作業も変化してゆきます。





墨から硯、書の説明と1時間ほどのお話を伺った後に、握り墨の製作に。
先ほどの職人さんが練ってくれたものを、手のひらに乗せてもらい、ぎゅっと握る。握り方でそれぞれの表情が出て、面白い体験でした。袋の中に入れて水分を飛ばせば、3ヶ月ほどで使えるようになるとのこと。


今回の見学を通して、職種は違えど、伝統産業の現場は共通する部分が多いなとゆうことと、これからの職人の育成について考える機会となりました。
そして、墨と硯、水の関係を知れたことで、書の作品を観る際の補助線をいただきました。
お声がけいただいた華雪さん、心よりありがとうございました。
只今、西日本ツアーの真っ最中。
神戸での銅鍋づくり体験が終わり、明日からの福岡での銅鍋づくりへと、今回のツアーも、着実に歩を進めております。
いつも、九州へ銅鍋づくり体験で赴く際には、門司港のホテルで行き交う船を眺めながら、今後のことを考えることが、一つの儀式のようになっております。今回も2泊3日でホテルに籠り、来年のことを考えています。
そのひとつとして、今後は銅のカップを定番から外します。
一番身近に感じ、確かに毎日使うものではあるのですが、それを鎚起銅器の入門編として提示するのが、よいことなのだろうか?と考えた末に。
銅は熱伝導率がよく、その特性を活かしたものとして、湯沸や銅鍋は重宝します。その反転として、カップに冷たいものを入れた際には、汗をかいてしまうのです。それが良いのかどうか。とゆうことをずっと考えていたのです。
ですので、鎚起銅器入門編としては、ツバメコーヒーさんが企画デザインしてくれた、盆をオススメしたいと思います。
こちらも、日々のお料理を楽しんでもらう際には、冷やして使っても良いですし、少し、あたたかくして使っても良い器。サイズも5寸から1尺1寸まで、1寸刻みで製作しています。

また、最初に鎚起銅器の技術がたくさん詰まった湯沸から始めてもらえたら、その特性を存分に感じてもらえるものと思いますが、そのハードルが高い場合には、鍋も200年前と変わらずに生活に適した器としてご活用いただけると思います。


しかし、やはり入門編とゆうことで触れていただく為には、どんなものが鎚起銅器の特徴を活かしつつ、身近に使っていただけるかを、これから更に考えて試作をしてゆきたいと思います。
また、体験とゆう形で、銅鍋づくりをしていただき、ご自身の手で生み出した道具から始めていただけることもよいかと思います。ご自身の手で、ご自身のつくりたい形を生み出す。そんな銅鍋づくり体験も、引き続き開催し続けたいと思います。
1日かけて1枚の銅板からつくる銅鍋づくり体験の模様はこちらから
銅鍋づくり体験 in新潟
2020年も3月から11月にかけて、日本各地で銅鍋づくり体験を主催してくださる場所に伺います。
詳細につきましては、銅鍋づくり体験についてをご覧ください。
とはいえ、カップの手触りやその特徴をご理解いただき、ご要望があればお作りいたしますし、新潟市東中通一番町にあるBarBookBoxさんのように、カップやチロリを実感していただける店舗もございますので、是非、そちらに足を運んでいただき、カップをお使いいただき、ご納得の上で形など店主に相談していただけたら、私も製作しがいがあるものです。
「カップは鎚起銅器の入門編としてはどうなのか?」とゆう問いから、このような形になりましたが、引き続き、鎚起銅器を通して想像力を育んでいただけるように、出張から帰り次第製作に励みたいと思います。
そして、工房で製作に励みつつ、各地に赴き鎚起銅器をお伝えすると共に、見聞を広め、今の器作りを続けてゆきます。
12月4日水曜日、関門海峡臨むホテルにて。
鎚起銅器職人大橋保隆
いつもお世話になっているヒメミズキさんを通して、新潟市にあるキューブデザインさんからご依頼をいただきました。
妙高市にできる住宅の大きなランプシェード。
大きなダイニングテーブルを光で包み込むような、ご家族で集われる場所に溶け込むようなランプシェードとゆうことで、初めてのサイズ製作となりました。
140センチ×50センチ×h25センチ
まずは、製作の風景から。

1m×2mのメーター板と言われる、材料の中で一番大きな板からの切り出し。

このご相談をお受けした際には、一人でつくるのは難しいかなと思っていたのですが、気の合う者との共作でないとうまくゆかないと思い、一人での製作に挑む形に。
工房でも、父の上り盤と私の上がり盤を両方使っての製作。

相談の結果、部屋の色とのバランスで、土色の外側と、光の反射を考えて内側は月色にするため、平らなうちに錫引きへ。
普段なら、バフで綺麗に磨けるものも、この大きさになると、手作業となり、全身を使う作業の始まり。

内側から叩き込み、モクモクとした湧き上がるようなイメージで、形をつくってゆきます。

形が完成した後に、外側から、普段は大きく形を変える時に使う金鎚で、外側から叩き締め、形の整えます。
キューブデザイン さんと相談しつつ進める今回のランプシェードは、自分の頭の中で完成させるよりも、相談の中で形が出来上がりました。
この波を残すのもそうで、職人としてよりも、作家性を重視して、普段の自分の仕事から少し離れたところで、完成を目指していました。
吊るされる前のランプシェード。
空間に収まるまでは、私の想像を託す形となります。

と共に、内側の細工も製作。
光が前面に出ないように、反射板も製作。
10年位経った後、ライトも交換できるようにと、考えを巡らせます。このあたりの設計を考えるのも好きなのだなと感じた、今回の仕事です。
本体と反射板の組み合わせ、それが天井から吊るされ、何十年とご一緒するための設計。






吊るされている画像をお送りいただき、空間に溶け込んでいることを確認できほっと一息。
そして、今回は完成見学会もあり、ヒメミズキさんのコーディネートがされている中で、想像も膨らみます。
25日には、私も足を運ばせてもらい、いろんな角度からランプシェードを確かめて、ほーーーーっと一息つくことができました。

今回の経験をさせてもらい、設計された方との交流の中で、建築と工芸について、改めて考える機会をいただきました。
工芸や美術は、建築とゆう空間づくりの中から派生したものと考えています。
その空間の中で、どうものづくりが活きるのか。
また、ひとつ言葉に落とし込めるように考えたいと思います。
今回、このような貴重な機会をあたえていただきました、キューブデザインさんありがとうございました。
そして、いつもご縁を繋いでくださるヒメミズキさんに、心より感謝致します。
こんな感性を持たれる、キューブデザイン さんの完成見学会も各地で行われるとのことですので、是非、足を運んでいただき、実感していただけたら幸いです。
10月6日よりの1ヶ月、銀座松屋さんで開催されていた工芸批評の展示会に、企画デザインをしてくれたツバメコーヒー店主の田中さんと、やっと伺うことができました。
この展示は、秋の工場の祭典で定点的にお話会に来てくださっている明治大学講師であり哲学者の鞍田崇さんに推薦していただき、参加させていただきました。


鞍田さんとは、この5年ほど、交流を持たせていただき、今の工芸の流れを学ばせていただいたり、各地の作り手さんをご紹介いただき、書家の華雪さんとも、鞍田さんの授業で知り合ったことを思い出します。
この様な機会をいただくことで、とても励みになり、自分の器を改めて見直すこととなりました。
鞍田さんには、いつもご縁をいただき、心より感謝しております。
また、夜には「青花の会」に参加し、ギャラリーオーナーの松本武明さんと山内彩子さんのお話を聞きに。

クラフトフェアやSNSの登場で、 作り手と買い手の距離が近くなり、 その間で作り手の健全な経営ができるようになったとき、 ギャラリーの意味が問われている、今。と感じています。
また、それだからこそ、売り手の観る力が作り手に与える影響も大きいだろうなと思う今日この頃です。
いくつか質問したかったこと、またいつか。
東京で、学び多き時間を過ごさせていただきました。
また、工房に帰り励みます。