日記

ものづくりやワークショップなどの様々な活動、
日々思うことなどを綴っています

みなさんのお風呂は二穴式ですか?一穴式でしょうか?
今夜、風呂釜を掃除を始めた際に、全てを綺麗にしようと浴槽の風呂釜部分を解体してみたら、どうもおかしい。下の穴は、確かに稼働しているようですが、上の穴は稼働していないようで。プラスのネジを一所懸命に回してみたら、プラスネジが結構長く。回して回して、最後の方で、「チャリン」とゆう何か嫌な音がしました。
基本、プラスのネジが回るとゆうことは、躯体に何某かの固定されたものがあって、そこにネジが差し込まれていて、回してゆけば緩むとゆう構造と思っていましたので。

全てを外してみて、こんな図に。
でも、元に戻そうと思っても、上の穴の奥には何もなく、プラスネジを差し込む場所もなく、ネジが入る穴がない。ここでさっきの「チャリン」とゆう音を思い出しまして。外部の差し込み口を落としてしまったことに気づきました。
浴槽の外を見てみようと思いましたが、外の床は嵌め込んであってすぐには開けられない。
どんな状況でこれができたのだろう?と。浴槽の構造をネットを調べてみたら、どうもそのような穴を塞ぐ器具が販売されているらしく。近くのコメリ資材館に行ってみました。そしたら、確かにある。

開けてみると、確かに同じもの。我が家の浴槽をつくってくれた職人さんもコメリで仕入れたのかもしれません。そんなことを思いながら帰り道、「でも、プラスネジの差し込まれた方が固定されていなければくるくると回って閉まらないはず。どうしてプラスネジの反対側を抑えていなくても固定されるのだろう?」と考えながら帰ってきました。

ここからは、私の想像ですが。
どうも、この裏金具の5ミリの違いが要のようです。この5ミリ違いの金具のために、プラスネジを回した時に裏金具の短い方と長い方のバランスが取れなくなり、くるくると回らない。片方が重い分だけ、力学的にその為にネジは締め込まれてゆく。
本当に、想像でしかないのですが、この構造をつくった方をご存知でしたら、教えていただけたら幸いです。その後ネットで調べても、構造考案者を調べることはできませんでした。

1時間30分ほどてんやわんやしながらも、金具代を払いながらも、この構造を考案された方の素晴らしさに感動し。また周辺の掃除も出来て佳き1日となりました。
人知れず、名も知られず、このように貢献してくださる方が居られること、私の希望となりました。

本日は啓蟄。
新潟県燕市は、新潟の中でも越後平野の真ん中。私が子供の頃は、たくさんの雪が降りましたが、昨今はそれほどの降雪もなく。穏やかな春を過ごしております。そんな穏やかな土曜日に、気になっていたことを、blogにまとめておききます。

それは、湯沸と水差しの違いについて。
みなさんは、どのような点で湯沸と水差しを見分けられているでしょうか?
現代は、なかなか水差しを使うような場面も少ないと思いますが、私は水道の蛇口から父の作った水差しに注ぎ、そこから水を飲んでいます。また、湯沸へ水と注ぐ際にも水差しを使います。
銅のイオン効果で、水が円やかになり、甘味も出るように感じます。個人的な感想となりますが。

さて、こちらをご覧いただいて。
右側が先輩につくっていただいた、水差し。
左側が私がつくった湯沸。
この二つは、対照的で違いの分かりやすい水差しと湯沸ですが、それらの違いの基本は同じです。
まずは、水差しは底の直径がが小さく、湯沸は大きいです。この違いは湯沸は火が当たり易くなることで銅器の特徴である熱伝導率の良さが発揮されます。
また、水差しは形の面白さを表現するために、高台をつけたり、底の裏に段を付けたりする場合もあります。

次には、分かりやすいのは、取っ手部分。
水差しは横に手が付いているものがあります。また熱くなるわけではないので、銅そのままの一体式です。
湯沸は、上手に取っ手が付いており、熱くなるので何某かの保護をされています。こちらの場合は、籐蔓が巻かれて本体が熱を持っても注げるようになっています。

この2点で、大体がわかります。
また、湯沸のような形でも注ぎ口に蓋がついている場合もありますのが、それは水差しとなります。
水差しを湯沸にするのは難しいですが、湯沸を水差し代わりに使う方もおられます。
お使い方はご自由ですので、どのように使われても良いのですが、この違いを理解していると道具への理解が深まれば幸いです。

一番最初の写真は、燕の大先輩の職人が製作した口打ち出し湯沸。
胴体の丸み、口の位置、口の膨らみと反り具合。どれをとっても私好みで在り、高い技術が詰め込まれています。
1番のお気に入りの湯沸です。

先日、金子建築事務所 金子勉さんにご指導を受け、蕎麦打ちを体験させてもらいました。
金子さんのご自宅は平屋建てで、季節を楽しみ、生活を楽しんでおられる様子が実感として身体に沁みてくるお宅。そのように暮らしている方からのお誘いは是非にと足を運ばせてもらいました。

蕎麦粉をじっくりと見るのも初めてで、このような挽き方の違い。その素材の違いが直接的に感じられるものなのだろうだなと、今まで食べた蕎麦を思い返しつつ、作業が始まります。

まずは、蕎麦粉をこね鉢の中に入れて、水とよく混ぜ合わせる。お湯が均等に粉と混ぜ合わせることがこつとか。
今回は、十割蕎麦で、粉500gに対して、お湯は250cc程。
お湯を3度位に分けて徐々に混ぜ合わせる。
最初は白っぽかった蕎麦粉も、段々と色がついてきて、水分の為に塊になりやすいようです。

水分が全体に行き割ったって、ちょうど良い硬さになったら塊にして、陶芸の菊練りのように捏ね上げ、最後には丸くする。

 今回は、お二人とご一緒させてもらったので、どんな工程で進むのか見学ができ、流れを把握できました。
そして、いざ。

塊になったら、それを板の上で平にし、手である程度の平にした後、めん棒でのしはじめます。このめん棒との呼吸をどう合わせるのか、集中しどころであり、無心に向き合う心地よい時間。 

均等に伸ばせたと感じられたところで、切り分ける。
このやり直しの効かない作業は、包丁とガイドと自分と三位一体のリズム。勘所をつかむまでに、どれだけの経験を積むのだろうと感じますが。
不揃いながら愛しい蕎麦ができあがりました。

精魂込めた蕎麦を茹でてもらい、日本酒と共に一献。
至福の時を過ごさせてもらいました。
そして、銅鍋づくり体験に参加してくださるみなさんの心持ちの一端を感じた思いです。
このような貴重な経験にお声がけくださった金子さん。ご指導をありがとうございました。そして、ご夫妻の心温まる時間をいつもありがとうございます。

そういえばと書棚から取り出してみた2冊の本。立春は過ぎたもののまだまだ寒い新潟。冬の季節に冷えるのは身体の中でも冷えに弱い臓器は腎臓。そして
身体を温めてくれるのは蕎麦だったなと。蕎麦は身体の芯からあたためてくれるとのこと。
陰陽五行的な学びを思い返しました。
休日の気分転換の手仕事してお酒好きの身体の養生としてまた蕎麦打ちをしてみたいと思う1日となりました。

鎚起銅器といえば、この色。と言われるくらいに代表的な色として広まっている金古色。なんと表現していいのか、光の当たり加減で青色にも緑色にも見える、所謂ところの玉虫色。
この色を出すためには下地づくりが大切で、錫の焼き加減が重要になってきます。
私は、表札にしか金古色を使っていませんが、このような下処理や道具の整備を今年は行ってゆきたいと思い、ひとつひとつ整理してゆきます。
金古色の見本は、このような色合いです。

金古色下処理。
まずは、材料を切り出し、錫を塗る。
この時点では、普段作っている盆などの月色表面処理と同じ工程。

この後が重要となり、月色の場合はバーナーのみで銅板に錫を焼き付けますが、金古色の場合は炭の上で焼き付けます。
私の考えでは、この炭素が重要と考えます。
大きな銅器屋さんでは、コークス炉があり炭ではなくコークスで焼き付けます。
高温が必要とゆう面もありますが、刀鍛冶がワラ灰を使うと聞きますが、そのような原子同士が溶着する際に必要なものなのかもしれません。

こちらの四角い七輪は、能登切り出し七輪。
良き道具は、気持ちよく仕事をさせてくれます。
詳しくは、こちらの過去blogをご覧ください。
「奥能登旅 七輪編」
https://tsuiki-oohashi.com/2020/09/12/4135/

焼き付けた後の図。

この時点でも、大体の成功具合はわかりますが、やはり綺麗にしてみるまでは、確信をもてません。
酸化膜を落とし、綺麗に磨いたらすっきり。これで表札の製作に実製作にはいれます。
表札製作の部分につきましては、こちらのblogにてご覧ください。
https://tsuiki-oohashi.com/2019/01/06/2347/

今年は腰を落ち着けて、様々なことを試し、このような探求を進めてゆきます。

今日は、グレゴリオ暦では2月1日。
日本で多く使われていた太陰暦では1つ目の月である睦月新月の始まりの日です。とゆうことは、新年を迎える日でもあります。
太陰暦という位なので、月のリズムで定められた暦。
月の始まりの1日のことを「ついたち」と言いますが、その語源は「つきたち」→「月立ち」から転じたとか。このように日本語の中にも知らず知らずに親しまれている月のリズムは、身体のリズムとも合うような気がします。
2022年今年の目標のひとつは、しっかりと休むこと。
鎚起銅器職人大橋保隆では、新月と満月を定休日としています。
本日はお休みをいただき、生活を整える1日。

そんな始まるの日に、月の暦を教えてくれた冨田貴史さんのことをお伝えします。
冨田貴史さんと出会ったのは、2012年くらいだったでしょうか。
彼は暦の話や養生の話、手仕事の話など、環境や生き方にまつわるお話し会を各地で日本開催されてました。
環境活動をしていた私は、2006年からお名前を知っていましたが、お会いするのは初めて。しかし、その当時の風貌や雰囲気が似ていることや、手仕事と環境のこと、また保養の活動をしていることなどの共通点があり、親交を深めさせてもらっています。

彼は今、大阪市中津の商店街で、冨貴工房というアトリエを持ち、植物の染め物づくりやみそづくり、執筆活動を生業としています。
この太陰暦新年に合わせて発刊した冨貴書房「暦のススメ 月編」をみなさんにお伝えしたいと思います。詳しくは、冨田さんのHPをご覧ください。
月の意味、地球と太陽と月の関係性、それらが私たちに与える影響など、とてもわかりやすく書かれています。
是非、この本を手にとっていただき、ご自身の感じたことも書き込みながら、月のリズムや太陽のリズムを感じ、自分の身体と向き合いながら、生活を営んでいただけたらと思います。
私が鎚起銅器職人と共に進めている生活手仕事研究所では、こちらの本を販売しております。

冨田さんは、今まで4冊の本を出版しており、私がお勧めしている本「ウランとみそ汁」と共に、以下のいずれかもう1冊をお買い上げいただいた方には、送料を無料でお送りします。
「暦のススメ 月編+ウランとみそ汁」
「いのちとみそ+ウランとみそ汁」
など、mailにてお申し付けください。
今日からの新しい一年をお祝いしたキャンペーンとして、睦月の晦日である3月2日まで。

いのちとみそ 550円
ウランとみそ汁 550円
暦のススメ 太陽編 880円
暦のススメ 月編 880円

合わせて、もうひとつの手仕事、茜染の品も生活手仕事研究所では取り扱いしております。
大橋の感想としては、茜染アイマスクはスッキリと起きられますし、茜染の肌着をつけているとあたたかさを感じます。
こちらの染物もアイマスク、ソックス、風呂敷など、各種取り揃えておりますのでご連絡ください。

自然の中の一部である私たちの身体の声を聴きながら、仕事と生活のバランスをとり営みを続けてゆきたいと思いますので、この一年もどうぞよろしくお願い致します。

鎚起銅器の仕上げにおいて、漆をかけることがあります。
何故、漆をかけるのか。
色艶に深みを増し、堅牢な色となります。

仕上げの内容としては、普段と同じように、器が完成したら綺麗に磨き、硫化カリュウムの水溶液の中に漬け込むことによって黒くします。

その後、艶を出すように磨き込み。
緑青硫酸銅の水溶液を沸かし、2分ほど銅器を煮込みます。

よく乾かし、ゆるく熱しながら漆を伸ばし塗ってゆきます。
全体的に漆が行き渡ったら、ムラの無いように全て拭き取り、その後、釜を被せて最弱の弱火で1時間。

最後にイボタ蝋とゆう純粋な蝋を塗ることで、艶がまします。
この辺りは、普段の銅器と同じ最終工程。
漆を塗ることで、深い艶感がでてきます。
今回は水盆とゆうことで、水滴などの後が出にくいように、このように漆をかける作業を入れました。
その使い勝手によって、鎚起銅器製作工程も幅をもって進めてゆきますので、ご相談ください。

謹賀新年

2022.01.01

明けましておめでとうございます。
寅年の今年はどんな年になるだろうか?どんな年にしたいだろうか?と、毎年恒例のマインドマップを描きあげました。
マインドマップは、中心にテーマとなる模様を描き込み、その後にテーマに沿った言葉を連ねてゆくことで、今現在の頭の中を整理する取り組みと捉えます。
毎年、元旦の朝からこのマインドマップに取り組み、今自分にある言葉を取り出してみて、今年の方針を考えます。
画像上部は、昨年のマインドマップ。
画像上部は、今年のマインドマップ。
昨年は、生活から派生した言葉がが大きな部分を占めていましたが、今年は、仕事をから派生した言葉が半分以上を占めました。
この中で感じたことを足元に、今年も一歩一歩と積み上げてゆきます。

今年は、職人となり25年の節目を迎えます。
昨年は、湯沸や薬缶をたくさんつくらせていただき、学び深い歳となりました。
先日のblogで、来年の目標のひとつとして、口打ち出し湯沸の私なりの理想の形をつくってみようと掲げました。
それと共に、今年は鎚起銅器に関する本「俗物」の出版も予定されています。
その出版に伴い執筆者のみなさんとのトークイベントも企画してゆきたいと考えています。
また、その本やイベント詳細につきましては、HP上でお伝えしてゆきます。

節目の年と言いましても、職人として日々変わらずに、日常のこととしてお客様のご依頼に添えるように、技術を研鑽し生活を寄り添った器づくりを進めてゆきます。
2022年もどうぞよろしくお願い致します。

大橋保隆 拝

鏨の種類

2021.12.30

私は、形を製作する鎚起と共に、表面に模様を施す彫金技術も学ばせていただきました。鎚起技術は玉川堂で、彫金技術は燕市内の彫金師 長谷川清師匠のところで。
師匠とはありがたいもので、修行時代は厳しく指導いただきましたが、独立してからは事あるごとに心配してくださり、私が訪ねることを待ってくださっていて。伺えばお茶を出しいろんな話をしてくださいます。その話の中、ふとした時に技術的に重要なことも出てきます。

昨日も、師匠が先輩から最近いただいたとゆう鏨を見せてくださり。その先輩とは100歳前くらいとのことですが、スプーンやフォークに文字彫りをされていた彫金師の方。
鏨を研ぐことを、私たちは刃を付けるといいますが、師匠もそのもらった刃付けの微細さを初めて見て驚いたとのこと。
当然ながら私も初めて拝見し、その微細さを更に微細にしたと表現したいような刃付けに、この鏨の資料的価値を感じました。

22年前に初めて師匠に教えていただいた時のメモ紙を取り出し、来年は各種資料整理も課題のひとつだと実感します。
燕市には、大別して工藝彫金とスプーンやフォークなどの型彫り彫金と2つの流れがありますが、師匠はその両方の知見を持っていられる方。貴重な話を来年も焼き付けておきたいと思います。

口打ち出し湯沸といえば、鎚起銅器で代表する技術のひとつ。
腕自慢の職人が多かった時代に、鎚起銅器の技術の先でどんなことができるのか、競い合いの中から生まれた技術と考えます。
ですので、どこが難しいのか、どこが要点なのかを、先ずは知る必要がある。
玉川堂六代目の工場長を担っていた父は、私が玉川堂へ入社した際にも、口打ち出し湯沸をよく作っていました。
その父は、「口の形がわかるまでは、口打ち出しはつくったらだめだぞ。」と、私に言っていました。

その理由が、数日までにふっと理解できた気がします。
今年は、湯沸や薬缶をたくさん作らせていただきました。その湯沸は本体と口は別々につくり、口を後から嵌め込むものですが、このような湯沸と口打ち出し湯沸はフォルムとして近くなくてはならい。とゆうこと。
それは製作工程上、口打ち出し湯沸が一番難しく、多くの職人が失敗する所でもあります。それでも、普段作っている湯沸にフォルムを近づけることが、職人たちの腕の見せどころだったのでしょう。

今、父は既に引退していますが、4年前に父から口打ち出し湯沸を教わる機会がありました。
それ以来も、腕を見せるよりもお客様に喜んでもらえる形の湯沸をつくりたいと思い、普通の湯沸をつくっていましたが、来年は父の思っていた口打ち出し湯沸をつくってみます。

4年前に父に教わった際の口打ち出し湯沸は、まだ完成前。

この湯沸を見ても、父が伝えたかったこと、フォルムの中のどこを重視しなければならないのかは、今なら理解できます。
4年前にはわからなかったこと。来年こそは、また一枚の板から。

銅板も金属なので、叩けば伸びます。
こちらのカップは、材料と比べてみた図。
一枚の板から叩き上げる鎚起銅器では、金鎚で叩いてはバナーで焼き鈍し柔らかくする。を繰り返しますが、このカップで12回ほど繰り返しました。
本体部分の材料が伸びながら、口径は縮まり高さが出てきます。

芸術大学などでで説明されている鍛金の製作方法と違い、鎚起銅器では材料をできるだけ無駄なく使えるようにとゆうような製法になっていると聞きます。
詳細にお伝えすると、底を張り出してゆく製法なのです。

以前ざっと計算したときには、最初の一枚の板より1.3倍は表面積が増えていました。
器をつくりながらも材料の貴重な時代を感じます。